Mikiyoshi1986

あこがれのMikiyoshi1986のレビュー・感想・評価

あこがれ(1958年製作の映画)
4.2
本日2月6日は私の敬愛するヌーヴェルヴァーグ監督の一人、フランソワ・トリュフォーの生誕85周年!

カイエデュシネマ誌の批評家として辣腕を振るっていたトリュフォーが本格的な映画製作に挑戦し、当時トゥール短編映画祭にて大好評を博した記念すべき短編作品。
私の初トリュフォー作品もまさしくこれで、元々「大人は判ってくれない」のDVDに併合収録されていたのがきっかけでした。

オープニングの曲を聴くだけで淡く切ないノスタルジーが胸を締め付け、我々を遠い遠い50年代のフランス・ニームの町へと誘います。

悪童たちが秘かに(?)想いを抱いていたベルナデットの清らかで端麗な容姿は、「あこがれ」の対象に素晴らしくマッチし、物語の主軸としてヴィーナス役を見事に担います。
対して彼氏役ジェラールは子ども目線から見てもいけ好かない印象ですが実際この二人は当時夫婦関係にあり、
しかもトリュフォーとジェラールはウマが合わなかったらしく、トリュフォーの私怨が少なからず反映されている印象。

トリュフォーは恋人たちの撮影よりもむしろ子供たちとの撮影を大変楽しんだそうで、
これが傑作「大人は判ってくれない」を生む足掛かりとなり「トリュフォーの思春期」へ繋がるのだと思うと、
不遇の不良少年時代を過ごした彼にとって、子どもへの溢れんばかりの愛情は意図せず過去の自己救済にも繋がっていたのかも知れません。

無邪気な悪ガキたちの純粋な「恋」の芽生えを汲み取り、切ない過去の記憶を我々に疑似体験されてくれるトリュフォー最初期の傑作。
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