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ソウのnetfilmsのレビュー・感想・評価

ソウ(2004年製作の映画)
3.8
 薄汚れた浴槽の中、沈められたアダム・フォークナー(リー・ワネル)は突如目を覚ましもがき始める。パニック状態の男は事態が飲み込めないまま、汚れた水の中からびっくりし勢い良く顔を出す。壁に足首を鉄の鎖で繋がれ、対角線上にはもう1人男がいて、中央ではもう1人の男が頭から血を流して死んでいる。生まれて初めて死体を目の前で見たアダムはただただ怯えている。薄汚れた広いバスルームで目を覚ました2人の男、2人は自分たちがなぜここにいるのかもさっぱりわからないまま、対角線上に鎖で繋がれていた。死体の脇に置かれたレコーダー、「PLAY ME」と書かれたマイクロテープ、拳銃に装填された一発の銃弾、タバコ2本、着信専用の携帯電話、そして2本のノコギリ。状況がまるで呑み込めず錯乱する2人に対し、マイクロテープの男の声は「6時間以内に目の前の男を殺すか、2人とも死ぬかだ」とメッセージを残し、彼ら2人を生死を賭けたゲームへと誘う。地下室(密室)の中に閉じ込められた2人、ホラー映画というよりも「ソリッド・シチュエーション・ホラー」と呼ばれた不条理劇の幕が開く。

 『ソウ』シリーズの記念すべき第一弾。ローレンス・ゴードン(ケイリー・エルウィス)とアダム・フォークナー、互いを知らない2人の男は見知らぬ部屋に監禁され、不条理な拷問を受ける。この恐怖に耐えられず頭を撃ってうつ伏せになる死体、あくまでゲームの参加者を殺さず、相手を死に追いやる「ジグソウ・キラー」と称する男の冷酷無比な非道さは、特等席で覗き見る快楽殺人の様相を呈す。犯人の手がかりとなる唯一の証拠品であるペンライト、その持ち主であるゴードンを一気に窮地へと陥る。妻アリソン・ゴードン(モニカ・ポッター)との関係はすっかり冷えたものとなり、娘ダイアナ(マッケンジー・ヴェガ)の男親への思いだけが僅かに核家族を繫ぎ止める。低予算であることを逆手に取った脚本作り、アクション場面は流石に未熟さを感じさせるものの、二転三転する物語は我々観客の興味を最後の最後まで釘付けにする。デイビッド・タップ(ダニー・グローヴァー)の有り得ないような最弱ぶりには流石に首を傾げるものの、真に結末の読めない展開がサンダンス映画祭を熱狂の渦へと導いた。
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