半兵衛

マックス、モン・アムールの半兵衛のレビュー・感想・評価

マックス、モン・アムール(1986年製作の映画)
3.8
大島渚監督は政治と攻撃性濃い目の作風が今一つ苦手であったが、ブニュエルやピエール・エテックスの作品を手掛けたことで知られるカリエールによる脚本がメインで大島監督はその作風を再現するという職人仕事に徹しているためかいつもの大島作品よりも抵抗なく鑑賞できた。

恵まれた外交官夫婦の生活に妻と猿の愛がひびをいれて、猿と人間の性行為は本当にできるか疑心暗鬼になり嫉妬にかられて変な行動をとっていく夫などシュールなブルジョワ批判の展開はいかにもブニュエルみたいで楽しかったし、それが終盤家族愛へと変貌していくという人を食ったような物語も意外性があって面白かった。

チンパンジーが豪勢な家に住むというシチュエーションだけでも笑えるのに、そこにちょいちょい毒のあるジョークが入ってくるので変な面白さが込み上げてくる。終盤のありえない展開の怒涛攻撃は反則。

人間と猿の性行為が可能か確かめるため、夫が家に招き入れた娼婦が誰にでも分け隔てなく接してチンパンジーに優しく対応するなどめちゃくちゃいい人。あと猿と寝るの倍の値段でいいんだ…もうちょっと吹っ掛けてもいいのではと見てるこっちが心配になる。

シャーロット・ランプリングのシュールを心得た巧みな演技が、猿との愛に目覚めるというありえない設定をありにさせてしまうのはさすが一流女優。でもワンシーンだけ猿と絡んでいるとき本気で笑っているのが微笑ましい。

個人的には恐らく脚本家つながりで出演したとおぼしき探偵役のピエール・エテックスや、猿アレルギーでひどい目に遭うメイド役のビクトリア・アブリルのコミカルな演技がツボだった。ちなみに『ハイヒール』で坂本龍一と仕事をするアブリルが坂本とは関係性の深い大島渚の作品に出ているのが興味深い。

辛口なラストも◎。
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