よしまる

コンドルのよしまるのレビュー・感想・評価

コンドル(1975年製作の映画)
3.8
ジャケ写を見ると、一見シドニーポラックらしい大人な恋愛ドラマ、しかしながら中身は固茹でなポリティカルサスペンス。
つまり全然ちがーう笑

ロバート・レッドフォードはポラック監督とは4作目。さすがにレッドフォードの知的で冷静沈着な男前ぶりを存分に引き出しており、共演のフェイ・ダナウェイがこれまた面白いように惹かれてしまう。

フェイ・ダナウェイと言えばクールビューティー、ちょっと澄ました淑女という印象だけれど、この映画では他であまり見ることが出来ない恋する乙女を堪能できる。一夜を過ごしたあとのキッチンでのキュートな表情は必見だ。

その彼女、ほぼ拉致のように連れられ、居候され、いずれそのイケメンぶりに虜になってしまう。こんな優しい男に甘えられたらそりゃ落ちるよね?なんて考えてみても女性の気持ちが分かるはずもなく。

とまあそんなメロメロドラマは本筋ではなく、言わば時代的な添え物。

中身はと言えば、巻き込まれ型のサスペンスと見せかけて、知らぬ間に自分が重要人物として狙われていることがわかってくるというスリリングな展開。徐々に黒幕に近づくにつれ、その陰謀に戦慄する。
見えない巨悪の存在、は情報化社会を迎える前の当時の流行?だったかも。

始まりは緩やか、まずCIAに所属する書籍分析員という設定が面白い。実際にこんな仕事があるのだろうか?
世の中のあらゆる推理探偵小説を読み漁り、その中に実際に諜報機関として漏れている情報は無いか、あるいは活動のヒントは?とにかく毎日ひたすら本を読まレポートを書くという仕事。ちょっとやりたい笑

その膨大な知識を使って危機をくぐりぬけ、真相を探りだし、ついには事件の核心に迫るというあまり見かけない類の設定だ。

これは原作小説がすごいのか、脚本が上手いのか、話の流れが非常に流麗で、レッドフォードの見た目のイメージとの合致がすごい。

ポラック監督との仕事も多いジャズピアニストのデイブグルーシンによる劇伴も、軽快なナンバーでテンポよく見せるのに一役買っている。てかサントラ見つからなくて、欲しい〜。

ただ、演出としては非常に手堅いのだけれど、手に汗握るにはややスマート過ぎて、同時期に同じレッドフォードの「大統領の陰謀」や、「パララックスビュー」などを手がけたアランJパクラのほうが自分にはやはり好みだ。

そのぶん、北欧の巨人マックス・フォン・シドーの殺し屋のカッコ良さが、作品の甘さを抑えてくれている。ベルイマンの常連からエクソシストを経て、この時40代半ば。
言葉は最小限、顔の表情だけで含みを持たせる深い演技がめっちゃ痺れる。この辺りから性格俳優へと変貌していったのかもしれない(違ってたらすみません)。あまり出番は無くともインパクトを残す彼の姿を観るだけでも値打ちのある作品だ。