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おにいちゃんのハナビのtakのレビュー・感想・評価

おにいちゃんのハナビ(2010年製作の映画)
3.5
白血病の妹の為に、引きこもっていた兄貴が頑張るお話、と聞いて、難病ものかぁ、お涙ちょうだいな映画なんやろ、と正直期待せずに劇場へ。

多くの人がこの映画について言うように、まさに「ベタ」な映画だ。気丈で兄貴思いの妹、そんな妹には逆らえずに次第に心を開いていく兄貴。映画半ばで死んでしまった妹の為に、一念発起する兄貴。ここまで読んで、「難病もの+成長物語」の王道みたいに多くの方々は思うことだろう。でもね、この「ベタ」さが全然あざとくない。作り手が観客泣かそうとあの手この手で迫ってくる映画ではないのだ。むしろ僕らは、その「ベタ」さを観客席で素直に受け止められる。エンドクレジットの藤井フミヤの主題歌はさすがに「泣かせ」ようとするスタッフの意思を感じたが(笑)、それでもクレジットの途中で席を立とうとは決して思わなかった。「ベタ」だが、決してダサくない。素直に泣ける映画だ。

妹の療養の為に、東京から新潟に引っ越してきた須藤一家。妹華(はな)が退院すると高校の卒業式以来兄が引きこもっていた。華は兄を立ち直らせようとあの手この手で励まし続ける。そんな妹に頑なだった兄は次第に心を開き始める。

一家が暮らす片貝町は、ギネスにも認定された世界一の大玉花火を打ち上げる花火大会で知られる。それだけでなく、この花火大会の資金は町民が持ち寄り、人生の節目の祝いや供養の為に奉納という形で花火を打ち上げる。嬉しさや悲しさを花火で分かち合う。そんな町なのだ。何て素敵な風習だろう。地元中学出身でその年に成人となる人々が集まる会も、その花火大会で自分たちの花火を打ち上げようと企画を練っていた。華は兄にその会に入ってみんなで花火を打ち上げて欲しいと願う。しかしよそ者だし人間関係を苦手とする彼は、苦労するが次第に会に受け入れられていく。そんな折、華の病気が再発。彼女は病床でも明るく振る舞い、「おにいちゃんの花火が見たい」を繰り返す。そして病状は深刻に。

ここまで読んで結末見えた!って思うでしょ。結末はその通りと言っていい。しかし、最初にも述べたようにその「ベタ」な展開が不自然に感じないし、無理してるとも思えない。それは、キャスティングや演技の巧さがあるんじゃないだろうか。高良健吾クンが次第に笑顔を取り戻す様子も、苦悩する表情も、人と会話できない様子も、わざとらしさは感じない。妹の死後にメッセージが届く重要な場面での号泣する姿。主演男優と思えないほどに、かっこ悪いくらいにボロボロ泣く。でも、きっと誰もがあんな涙を見せるだろうと思えるのだ。
 
宮崎美子扮する母親の笑顔を絶やさない気丈さと、その裏で堪えている姿。口数の少ない不器用な父親を演ずる大杉漣。その中で過剰?とも思えるくらいの兄妹の仲の良さ!谷村美月の健気さは、まるで教育映画?と思えるくらいに理想的妹像(笑)。繰り返すがこれくらい「ベタ」な感動を素直にさせてくれる映画はなかなかないと思うぞ。難を言えば、ラストの花火大会で成人会のみんなに親が頭下げるのはいかんと思う。そこはちょっと腹立たしかった。だが、そこを腹立たしく思うほど自分がこの映画を真剣に観ているってことでもあるか。映画館で観る際はできるだけ前で、部屋で観るならクライマックスは電気を消してご覧あれ!。花火大会は感動するよ。

北九州映画サークル協議会例会にて鑑賞。
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