巨匠マーティン・スコセッシが手掛けた、同タイトルの小説を原作とするミステリー映画。
主演のレオナルド・ディカプリオをはじめ、その相棒役のマーク・ラファロ、医師役のベン・キングズレーほか、名俳優達が多数出演している。
シャッターアイランドという孤島と島内の精神病院を舞台に、そこを訪れた主人公とその相棒がある事件の捜査を進める形で物語が展開しながら、巧妙かつ丁寧に組み込まれた脚本と演出の仕掛けがいくつもあり、不気味な違和感のピースが積み上がっていく。
終盤でそれらのピースの全てがひとつの画としてピタッと合わさり、物語の全貌と真実が明らかになる演出がとても秀逸で、さすが名作といわれるだけある作品だなと驚いた。
小説や映画の叙述手法でいうところの「信頼できない語り手」スタイルに該当する物語でありそうなことは序盤から分かるが、後半ではその予想の範疇にとどまらない重層的な展開があり、かつ人が生きるということをどう捉えるかについての哲学的で正解のない問いが読後感として重く残る。
演出全般については、さすが巨匠スコセッシと感嘆するほどの重量感ある超本格派で、(映画製作当時の) 最新のVFXや編集技術を取り入れながらも、ミステリー映画のど真ん中の演出を堂々といくスタイルがすごくかっこいい。
鈍色中心で構成された精神病院内のシーンと、鮮色中心で構成された回想シーンの対比構造的な色彩設計もまた美しく、小説文章ではなかなか描ききれない部分を補完する映画演出の強さがある。
原作小説の完成度に拠るところが大きいとは思うが、映画脚本としてのレベルが非常に高く、名優達の演技レベルの高さもあって、何度も再観賞してその巧妙な仕掛けの数々を確かめてみたくなる。
ミステリー映画の名作として、この先も永く語られるであろう作品。
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