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家の鍵のgenarowlandsのネタバレレビュー・内容・結末

家の鍵(2004年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

切ないという言葉は多用されていてあまり好きではないんだけれど、この映画は観ていて切なくなりました。

障がいをもつ子どもの親の苦しみと不安、守っていこうとする親の覚悟と、子どものあどけなさと親の気持ちを敏感に感じとる感性が相まって、複雑な思いになりました。

障がいをもつ子どもとその家族に正面から向き合い、きれいごと無しで取り組んだ秀作だと思います。

ドラマとしては、出産で妻を失い、そのショックで蒸発し、子どもを妻の兄に任せてきたジャンニが、15年経って、義兄から子どもを一時的に預かるところから始まります。そこで子どもに障がいがあることを初めて知らされます。ジャンニはすでに再婚していて小さな子どももいます。

最初はショックで、どう子どもと接したらいいかわからず、他人行儀なのですが、だんだんと情が湧き、息子と父親の関係になっていきます。でも、息子には自分が逃げた父親であるとは名乗れないのです。

子どもは、この人を信用してもいいものか、どこまで甘えられるか、わがままを言って愛情を確かめようとします。

ジャンニは終始笑顔なく、不安げで涙目です。短い間に父親としてできるかぎりの愛情を注ぎます。息子を叱ることもしません。ただ溺愛するのです。罪悪感から。

どうしても一緒に暮らしたいと思うようになり、息子に伝えると、僕にも家の鍵もらえる?とあどけなく言うのです。

帰り道、車の運転を邪魔してわがままを言う息子を叱ってしまうと、息子は、義兄の家に帰ると言って、ジャンニの心をもてあそびます。茫然とするジャンニ。
車から降りて泣き出します。

ジャンニを支える息子。僕の前で泣いてはだめでしょう、パパ。と、父親であることを息子はわかっていたのです。

障がいをもつ子どものためのリハビリ病院で出会った母娘の言葉が、ジャンニに覚悟をさせていきます。娘に障がいがあることがわかると、夫はいなくなってしまったと語る穏やかな母は、心を平穏に保つ方法をジャンニに教えます。そして、それまでの苦労と痛みも。きれいごとでは、育てられないことを知った上で、ジャンニは一緒に住もうと決意していたのです。

イタリアの映画です。この先、ジャンニは息子を生涯、育て上げ、大人になっても介護し続けられるのか、不安も感じさせる終わりかたでした。息子の自立心が強く、心情を察する感受性の豊かさと、父性を備えているところが救いでした。

現実をよくとらえた作品だと思います。
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