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パプリカのmarimoのレビュー・感想・評価

パプリカ(2006年製作の映画)
4.2
夢を見たという実感はあるのに
起きた瞬間から内容がこぼれ落ちていく感覚

夢特有の支離滅裂さや不気味さ
ただ夢を見ている本人はそれに気づけない
夢がもつ独自の秩序のようなもの

そんな”夢”としか言語化できない誰もがもつ概念をアニメーションで表現してしまっている

夢の具現化として本作以上の表現は無いと思います

ホテルの廊下での無重力描写
クリストファー・ノーランの「インセプション」が本作の影響を受けているのは明らかだったりします

オマージュと呼ぶのは何かが違う
これはノーランの夢にパプリカが植え付けたナニかを無意識に表現してしまったという事にしましょう
他人の夢と繋がる本作を理解した上での最高のアンサーなのだと思っています

本作が遺作となってしまった今敏監督
公開当時とは異なりラストシーンがより切なく
過去のフィルモグラフィー
「PERFECT BLUE」「千年女優」「東京ゴッドファーザーズ」に続く「夢見る子供たち」

未完成のままの次回作「夢みる機械」とも重なるそれを連想しながらチケットを購入して終わる素晴らしすぎるラストカット

夢と現実の描き分けだけでなく
現実のような夢
夢が侵食する現実

その今敏監督が描き続けた現実と虚構

映画というものを
その虚構性を作品のテーマとも重ねた演出
観客と作品のイマジナリーラインを超えてくるトリップ感

アニメだから何でもありなのではなく、アニメゆえに描き分けが難しい現実と夢の表現を実写映画の作法で落とし込みながらアニメでしか表現できないものにまた引き戻す異次元の手腕

現在のアニメと並べてもいまだに今敏監督の作品でしか得られないものに溢れてます
素晴らしい
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