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1987、ある闘いの真実のmarimoのレビュー・感想・評価

1987、ある闘いの真実(2017年製作の映画)
4.0
昨年末に鑑賞した「ソウルの春」で描かれた民主化への道が途絶えたその後の韓国

韓国の現代史を描いた映画を時系列で観ていこうと思い本作を鑑賞

軍事政権のなかある拷問事件をきっかけに民主化へと進む出来事を描いた作品

舞台となる1987年当時
韓国大統領はチョン・ドファンです
「ソウルの春」で、ファン・ジョンミンが演じたチョン・ドゥグァンのモデルとなったとされる人物

そんな軍事政権の中で
ソウル大の学生パク・ジョンチョルさんが治安本部の拷問により死亡
その証拠を消すための不自然な火葬要請
その要請に疑問を抱くソウル地検の検察官

一人一人の行動だけでは小さなものだが
その小さな事が積み重なり真実へと近づいていく
この一つの事件をきっかけに、関わる人々の行動が線となって繋がり
真相を巡る闘いが民主化の起点となっていく
韓国は民主化してからまだ40年も経っていない

私の年代だと生まれる前の出来事ではないという衝撃
同世代の韓国の方は、幼少期にこの時代を経験している

韓国の人たちの政治に対する関心の高さは
この時代がまだ過去と呼ぶには早すぎるからなのだと

もちろん映画的な脚色はあるが
多くの犠牲の中で様々な偶然が重なり開けた突破口
しかしこの出来事だけでなく
歴史には残らない数えきれないほど多くの消された真実があったから
それを忘れてはならないのだと

権力と隣り合わせにある悪への誘惑
姿や形を変えたそれは政治以外でも人を支配しようとする
ただどれほど栄華を築いた組織だとしてもその悪はいつかは露呈してしまうもの

それでも正されるまでの間で多くの苦しい思いをしていた人たちがいる
その事をちゃんと知っておかなければならない

学生当時は歴史の授業は暗記科目としてしか触れていなかった愚か者です
史実ベースの映画を通して、しっかり歴史を学んどけば良かったなと今更後悔する事が多い
今からでも学ぶのは遅くないとは思っているが
若い世代の方にこそ映画を通してでも学んでほしい

イ・ハニョルさんは実在の人物なのだとのエンディングで知り
鑑賞後にめちゃくちゃ調べてしまった

あの靴の描写は100%フィクションかと思っていたのですが
当時イ・ハニョルさんが履いていた靴の片方だけが韓国の記念館には展示されているそうです

パク・ジョンチョルさんが拷問された部屋も当時のまま残っているそうです

韓国現代史をまずは映画を通して知って
脚色箇所はちゃんと調べた上で現地にも行ってちゃんと学びたいと思います
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