ふぇりな

ドゥ・ザ・ライト・シングのふぇりなのレビュー・感想・評価

ドゥ・ザ・ライト・シング(1989年製作の映画)
3.8
初めてのスパイク・リー作品でした。なんと監督だけでなく俳優として出演してもいて、しかもほぼ主演くらいの重要キャラクターを演じていて驚きました。才能がすごすぎます。

黒人に対する人種差別が主軸の物語ですが、他作品と異なるのはイタリア系・アジア系、そして障害のある白人の人物も登場するところでしょう。個人的に、黒人差別ばかりがフィーチャーされてアジア人差別にはあまり焦点が当たらないことを苦々しく思っているので、こんな初期から他人種にも目を向けていたスパイク・リーの視野の広さに感動しました。もう少しアジア人とのかかわりも詳しく描いてほしかったとは感じますが、黒人への暴力に対して同じように抗議している描写があったのがとてもよかったです。

本作を観て印象に残ったことは、まず、真の善人が登場しないことと、真の悪人が登場しないことでした。どの人物もそれぞれに偏見や問題を抱えていて、手放しでは褒められないけれど、でも温かい心や他者への思いやりも同時に持ち合わせている人が多くて、リアルでした(息子のピノだけは微妙でしたが…)。
それから、セリフとしては「(名だたるミュージシャンの名を挙げて)感謝します。あなた方のおかげで私たちは人生に耐えられている(表現違うかも)」という言葉が大好きでした。音楽って特に黒人発祥の文化が非常に多いですし、こんな苦しい世の中でなんとか耐えられる支えになっているというのは私ですら感じることなので、音楽へのリスペクトと愛を感じました。

この映画の公開から何十年もたっているにも関わらず、いまだに黒人差別が根強く、警察官による殺人も起こっているのは信じられない事実です。
起きている場所が違ったとしても、人種が違ったとしても、背景になにがあるのかは誰もが考えなくてはならないことだと思います。キング牧師が正しいのか、マルコムXが正しいのか、はたまたどちらも間違っているのか…正しいことをするって難しいですが、努力をやめたらだめだなと考える映画でした。
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