この母親の異常な程の子への溺愛ぶりは、何だか逃れられない過去の闇を背負った者の贖罪のようでもある。
そして信じて疑わなかった事が脆くも崩れ去り、新たに生まれた幾つもの闇が更に母親を苦しめる。
知的障害を持つ息子が事の真偽を理解していないのがせめての救いか。
忘れたくてもなかなかそうはいかないだろう。闇に包まれて生きていかねばならないのは辛い。さらに大きな業を背負って母親は真っ当にやっていけるだろうか。
息子との慎ましい暮らしが彼女の持つ闇を徐々に晴らしてくれるだろうか。
或いは息子と一緒に暮らしているうちはそれも望めないのか。息子の顔にジョンパルが浮かぶだろうか。
息子を取り戻したことは事実であり母親にとっては何物にも変えられない成果だったのだろうが、後味は極めて悪い。
ボン・ジュノ監督、かなり抉ってくるね。
キム・ヘジャの演技は圧巻。
