オリカ

母なる証明のオリカのレビュー・感想・評価

母なる証明(2009年製作の映画)
4.2
背筋がゾゾゾってなる映画だった。
まず冒頭でおばさんがクネクネと踊っているのだけど、何とも言えない不穏で暗い雰囲気で踊っているけど楽しんでいる風でもなくて、
あ、これは今後起きる嫌な出来事の前触れだなって感じた。

28歳の息子であるトジュンは、知的障害(精神障害?)、記憶障害があるが無邪気で純粋で可愛らしい、というイメージ。
(病気に関しては詳細は触れていないので良くわからない…)
母親が常にこのトジュンを気にかけて、心配しているのだけど
ハッキリ言うともうそれはやり過ぎだよ、お母さん、、って思うほど。
母親ってそんなものだと言う人もいるのかもしれないし、
トジュンの場合は健常者ではないから、母親として面倒見るのは当然って部分もあるんだけれど見ていて「うわー」って思ってしまった。

トジュンがある殺人事件の容疑者として捕まったことで、
母親が無実を証明するために奮闘する。
「殺人の追憶」でもそうだったのだけど、
警察があまりにも無能だし面倒くさがり。
もう犯人はトジュンで良いじゃん、みたいなノリで取調べをしたりで
観ていて本当にイライラしてしまった。


-----------以下、ネタバレあり--------------





私が一番ゾッとしてしまったのは、トジュンがたまに何もかも知っている、という目つきや表情をするシーン。
恐らくトジュンは確かに何かしらの障害を持っているのかもしれないけど、本当は色々な事に気付いているよなぁと思った。
そして、そんなトジュンに母親も気付いているんだよなぁ、多分。
そう考えてしまうと、「この親子…怖い」って思ってしまった。
最後に身代わりとなって捕まってしまった彼には、トジュンの母親のように無実を証明するために奮闘する身内は居ない。
その事実を知ってしまって号泣するシーンでは、可哀相にって不憫に想う気持ちと、本当は無実なのに申し訳ないっていう謝罪の気持ちと
それでもトジュンは解放されて良かった、という安堵感がゴチャゴチャになっていただろうなぁと感じた。

聖母マリアのように一途に子供を想う白い面と、自分の子さえ守れれば他人などどうでも良いという黒い面が同居している感じが怖い。
そして、それでもこれからもトジュンを守りながら生きていかなくては、この事実を全て無かったことにして、忘れるフリをしてでも生きていかなくては…ってなった時に、あの無表情のダンスなのかなって感じた。
やっぱり母親って狂気的に強い一面を秘めているのだな、と思う。
オリカ

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