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の・ようなもののプレコップのレビュー・感想・評価

の・ようなもの(1981年製作の映画)
4.4
森田芳光の長編デビュー作は青春の終わりと東京演芸への愛を感じさせる

まとまったストーリーはなく、独特なセンスの作品なので好き嫌いは大きく分かれそうだが、個人的にはこの映画の非常に楽天主義的で気取っていない温度感がとても好きだった

効果音の多用や粗すぎる編集など気になるところもある(いわゆる森田芳光っぽいところ)。でもそれを補って余りある丁々発止の江戸言葉のラリーの心地よさや当時の団地が持つエネルギー、ふとした時に登場する東京演芸界のスターたち、そしてアクが強く、舌足らずにも見えるがクセになる演技。どれも観ていて楽しいし、全く飽きない。

東京を舞台にした作品(とは言っても下町が舞台なので「男はつらいよ」とかはあるけど)、あるいは性産業に従事する女性が登場する作品は冷たく、負の側面が大きい、重いテーマが多くなりがちだが、それとは正反対の温度感を体感できる。それだけでも一見の価値あり。

個人的に好きなシーンはYMO「BGM」のジャケ写パロディをやりたかっただけのシーンと直後の答え合わせ。そして、クラフトワークなんかが好きな志ん菜が「金属落語」と評される一連のくだり。
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