映画ネズミ

スターシップ・トゥルーパーズの映画ネズミのレビュー・感想・評価

4.5
 おかげさまで、20人以上の方にフォローしていただきました。ありがとうございます!m(_ _)m今後ともよろしくお願いいたします。感謝の気持ちを込めて、「なにをいまさらw」と言われそうな『スターシップ・トゥルーパーズ』です。

ネズミの感想はこんな感じです:サイテーだけど、サイコー!

この映画はこういう人に向いています:
① 今の映画を「ヌルイ!<`ヘ´>」と思う人
② 戦争映画が大好きな人

この映画はこういう人には不向きです:
① 手足が吹き飛ぶ描写に耐性がない人
② 女性のおっぱいに耐性がない人

 お話は、「主人公リコは、高校でも成績が悪かったが、彼女にカッコつけたくて軍に入隊し、仲間の犠牲を経験しながら、一人前の兵士となっていく」という話です。

 私は、好きな映画監督は大勢いますが(こないだスピルバーグといったばっかじゃねーか)、天才と思っている映画監督が3人いまして、ジョージ・ルーカス、フランシス・フォード・コッポラそしてポール・バーホーベンです。なぜこの3人が天才と思うかというと、「彼らの映画は、絶対に彼らにしか撮れない」と思うからです。

 ルーカスとコッポラの話はまたの機会にしましょう。バーホーベンの映画は、非常にシリアスな政治的問題を扱いながら、それを、観客に一切気を遣わないエロ、グロ描写と、全編に込めた皮肉と大量のユーモアを使って観客に「自分で理解させる」タイプの映画です(通称:バーホーベンテイスト)。監督も、「バカにはオレの映画は分からないよ」と言ってるみたいです。

 そんな独特のテイストにやられちゃうと、やれレイティングだ、やれポリティカリー・コレクトネス(カーチェイスで主人公はシートベルトしろみたいなことです)だに囚われた大衆向け映画を見ても、どこか「もっとやれよ!」と思ってしまうから、バーホーベンの映画は好きでもあるし、「好みがおかしくなったのはお前のせいだぞ!」という複雑な気持ちにもなります。

 本作も、『宇宙の戦士』という、機動戦士ガンダムにも影響を与えた小説に、エロとグロと皮肉とユーモアを特盛にして、原作を徹底的におちょくる映画になってしまいました(匠の技ならぬバーホーベンの技です)。そんな映画にディズニーが100億円出資していたという事実に笑いが止まりませんw(しかもおもちゃまで発売する予定だったそうですよ。子供見れるかコレっ!)

 とはいえ、バーホーベンは後のインタビューで、「この映画を作るべき時だって思った。」と語っており、製作に当たっての姿勢は極めて真面目だったことが分かります。バーホーベンのツボっていうのは、「快楽主義のバカな映画を見ながら、政治的でマジメなことを考えさせる」ところにあるのかもしれないです。

 本作は、冒頭であまりにも唐突に「みんな武器を持って戦おう!」という国営放送のニュースから始まります。もうこの時点で、この映画のスタンスについてこられるか試されます。あまりにバカバカしい(けどよくできてる)CMに、「ウケるw」と思う人もいれば、この時点で「無理……」と思う人もいるかもしれません。

 そこから、バグズ(巨大カマキリのような虫)と人間軍との壮絶な戦闘が始まります。バーホーベンはグロ描写に遠慮がないですから、バグたちが人間の兵士を八つ裂きにしていくところを、太陽さんさんの昼間にバッチリ映します。

 宇宙では、バグの対空砲火を受ける宇宙艦隊を、ミニチュアとCGの合成で描いているのですが、これが『スター・ウォーズ』に優るとも劣らない迫力です。個人的には、史上最高の宇宙戦闘シーンのひとつです。

 バーホーベンは、徹底して男女同権といいますか、男と女が同じ部屋で着替えたり、シャワーを浴びたりしますし、男性よりも優れた女性を登場させることが多いです。私のお気に入りキャラは、冒頭から主人公にメロメロなのに振り向いてもらえない戦闘系乙女・ディズ(ディナ・メイヤー)ですね。主人公を圧倒する戦闘意欲とたくましさで、次々バグをやっつけてくれる爽快さもありますし、主人公を前にすると女の子になるギャップに萌えますね!

 この映画は「ナチスのプロパガンダ映画のパロディ」なんですが、素晴らしいのは、軍国主義を徹底的にコケにしているのに、若者が1人前の兵士になっていく姿は、やっぱりカッコいいところです(もちろん、武器や軍服、宇宙船も絶妙にダサいけどカッコいいです)。プロパガンダ映画というのは、そこで描かれていることが「すごい!」と思えなければ成立しないのですが、本作は、その領域までキッチリ再現してしまっているのです。

 だから、パロディなのに、アメリカで「こんなナチズム礼賛映画はけしからん!」とマジで怒られちゃって、「あれはギャグなんですよ」と監督が弁明してまわる事態になりました(ギャグをギャグですよと説明させられるって、どんな拷問……!)。

 しかし、そこはそこ。『イングロリアス・バスターズ』でも言っていましたが、「ナチの軍服や戦車はカッコいいけど、ナチズムやナチのやったことは、非人道的な悪行」というように、分けて考える必要があるんですね(戦争映画が好きだからといって、戦争が好きなわけではないのと同じです)。

 ラストに近い部分で、主人公が突撃していく兵士の中に紛れて分からなくなってしまうところがあります。意図的かどうかは分かりませんが、元々戦争に行く気のなかった主人公が、軍国主義や戦争に魅せられて、何万人と居る、個性のない兵士の1人になってしまった瞬間を描いていて、盛り上がるんですけど、痛烈な皮肉にもなっていると思います。

 ということで、レイティングを度外視してやりたいことをキッチリやった描写の数々と、あらゆる意味でプロパガンダを徹底的にパロディにした、ダサくてカッコいい、サイテーだけどサイコーな戦争映画です!大好きだよバーホーベン!

 さて、匠の技シリーズ第5弾は、トニー・スコット監督『アンストッパブル』です。山猿ども! 命を惜しまず闘え!

『~2』『~3』『~インベイジョン』
 『2』と『3』が実写版の続編です。バーホーベン先生は「予算が……(汗)」と、100点のコメント。予算が減らされてしまい、1作目を見ているとビックリするくらいのスケールダウンですね……さすがに褒められた出来じゃなくて色々とズッコケますが、『3』に出てくる、「本日は死に日和」という軍司令官の持ち歌がケッ作です。『インベイジョン』は……『ヘイロー』のムービーみたいでした。

『マネー・ショート 華麗なる大逆転』
 バーホーベン先生がインタビューで褒めていたアメリカ映画です。確かに、バーホーベンテイストみたいなものをほんのり感じます。コメディタッチも交えていますが、リーマン・ショックを招きながら反省しない金融業界への怒りに満ちた社会派作品です。久々に出た、「邦題&日本での宣伝と内容が違いすぎる映画」でもあります。
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