映画ネズミ

とおいらいめいの映画ネズミのレビュー・感想・評価

とおいらいめい(2022年製作の映画)
4.0
向いている人:
①家族・きょうだいを描いた映画が好きな人
②美しい映像が見たい人

 チネマットオンライン試写会で鑑賞しました。

 彗星が地球に衝突することが確定し、皆それに向けて備えている世界で、父の葬儀のために、長女・絢音(あやね)と次女・花音(かのん)、2人の異母妹である音(おと)が共同生活を始めることになる、という物語です。

 ハリウッドなら『アルマゲドン』『ディープ・インパクト』のような大スケールの超大作として描きそうな題材を、この3人の共同生活に絞って描いたミニマムな人間ドラマです。

 食料を備蓄していたり、町に人が居なかったり、シェルターの建築士が出てきたりと、「世界の終わり」を感じさせつつ、「日常」の範囲を出ない細かなディテールが満載でした。

 個人的には、「世界を巻き込む大異変の中で生きる市井の人々を描いた小さなお話」がとにかく好きで、好みにばっちりハマる作品でした。

 『猿の惑星:新世紀』の公開前に配信された「BEFORE THE DAWN」という短編映画シリーズがあって、人間文明が次第に崩壊して「猿の惑星」になっていく中で必死に生きる市井の人々を描いていたのですが、本作は、テイストこそ違うものの、コンセプトは似ていて、とても好みでした。

 世界の終わりを前に、パニックが起こるというより、静かに狂気が広がっていき、人の精神が疲弊していく様子がリアルですし、少女時代の絢音と花音が2人で冒険に出るシーンの高揚感は、たまらないものがありましたね。現在と過去を行き来するシーンの繋ぎもとても巧みでした。

 そして映像の美しさは息をのむほどでした! 早朝・夕暮れの最も素晴らしい瞬間を切り取った、絵画のような映像にうっとりしてしまいました。

 公式サイトにも書かれている12分間の長回しのシーンも含めて、映像も本当に素晴らしかったです。

 理屈抜きで好きな「世界の終わり」ドラマ。150分という尺を贅沢に使った、でも無駄のない作品でした!
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