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遊星からの物体XのTAのレビュー・感想・評価

遊星からの物体X(1982年製作の映画)
4.7
   トラウマ必至のクリーチャーの造形によって監督ジョン・カーペンターの名前を二度と忘れられなくなる、ボディ・スナッチャー系SFモンスターパニックの秀作。
   個人的にはそのジャンルにおいての必修科目と言っても良いと思っています。

   冒頭の美しい大雪原とそれをバックに刻まれるベース音(ででん......ででんっ...)にはこれから展開される不穏な雰囲気の物語を予見する怖さが滲み出ており、何も分からないままの状態でありながら直ちに引き込まれる不気味さがとても素敵です。
   クリーチャーは早い段階でその姿を現しますが、一度見ただけではとてもじゃないがその全貌を把握出来ません。容易な解釈を否定するその異形ぶりに、初見時若かった私は動揺を隠せませんでした。
   『寄生獣』の元ネタであるものの、残念ながらこのオリジナルの足下には遠く及んでいないことが一目瞭然。他のモンスターパニックと比べても、半端なCGより人の手で作り込んだ造形の方がよっぽど説得力のある恐怖を掻き立てる事を証明する、価値ある作品です。

   また、多くの映画人が頻繁に引用し、劇中最も張り詰めた緊張感を以て描かれる中盤の「犯人探し」の場面の秀逸さ。
   観るものにも全く予測出来ない状況下で殺気立つ登場人物たちの焦燥と疑心暗鬼に満ちたあの雰囲気によって、後半に向けた大きな“溜め”の力が生み出されています。
   【追記:タランティーノは自身の新作『ヘイトフル・エイト』について本作のこの場面を引き合いに出してコメントしていましたね♪】

   余談だが登場する犬の躾(演技)が完璧すぎてため息出ます。
   ちゃんと演技してる...ように撮影と編集がなされていて、犬達の動きと表情でそのシーンが理解でき、それだけで見入ってしまいます。人間以外が主体となって展開されるシークエンスでも画の説得力が全く落ちないどころか、より強力に発信できるところにジョン・カーペンター先生の力量を感じました。

   もはや何回観たか分かりませんが、『ニューシネマ・パラダイス』の音楽を手掛けたエンニオ・モリコーネによるサントラと一緒に、噛めば噛むほど味が出続ける名作です。
  
   ラストの息の白さ云々によって一部ファンにより解釈される、あるキャラクターのクリーチャー説については、まだちょっと懐疑的♪♪
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