ヨダセアSeaYoda

地獄の黙示録のヨダセアSeaYodaのレビュー・感想・評価

地獄の黙示録(1979年製作の映画)
4.7
観た回数:計5回
 (内訳:無印2回 特別版2回 FC1回)
直近の鑑賞:映画館(FC 20.03.01)
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※特別完全版とファイナルカットについてもここで書きます
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【戦場の狂気】
 ベトナム戦争に関連する映画は多いですよね。
 戦争自体が悲惨なものですが、中でも特にベトナム戦争は「ここで命を賭ける事に意味があるのか?」と最も思われた戦争の1つでしょうから、映画化しやすいのでしょう。

 そんな数多の戦争映画の中でも今作は、 "戦場の狂気" を独特の形で描き出します。
 戦場でサーフィンをしようとしたり、『ワルキューレの騎行』を大音量で流しながら爆撃したり、長く共にいた味方が倒れる状況なのに拾ったばかりの犬を真っ先に探したり…
 "敵地に根付く、狂った裏切り者" を殺しに向かったはずなのに、味方だってどいつもこいつも狂ってやがるじゃないか…


【マーロン・ブランドの演技】
 精神が安定しない人物ばかりの今作、主人公ウィラードも例外ではありません。
 主演マーロン・ブランドの演技は非常に絶妙。

 彼の物語は俺の物語。溢れる狂気の中でカーツへの理解を深めていくウィラードは、基本的には必要最低限しか言葉を発しません。
 しかしマーロンの目線・表情だけで、ウィラードの心の動きがしっかりと掴み取れます。本当に印象的な演技です。


【特別完全版について】
 男達の慰安に使われる女達との絡みや、プランテーションのフランス人達との会話など、エピソードが多く追加されています。
 シェフとクリーンが喧嘩し始めた理由なども分かります。

 良く言えば、色々と流れがよく分かるし、伝えたい事も明確になっているため、観やすくなっています。

 悪く言えば、理性がしっかり介入するシーンが挟まることで、"狂気" が何度か薄れてしまいます。
 狂気を継続してどっぷり味わうのであれば、通常版の方がいいのかな、という印象です。

 特別版を観たことで、「こういうシーンがあったのにカットしたんだ」と知れて、更に通常版への愛着も強くなりました。
 "カットする勇気" って、何か特別なものを表現する勇気と同じくらい偉大なものだと思います。


【ファイナルカットについて】
 2020年日本公開のファイナルカット版では、編集は削り過ぎず足し過ぎず、無印版と特別完全版の間を取る形になりました。
 新たに生まれ変わった傑作が、高画質と共に戦争と狂気を現代に伝えます。

 今作を改めてIMAXで観れたことは本当に感激です。
 爆発、銃声、ワルキューレの騎行、絶叫、そして緊張の静寂…IMAXで味わう迫力は、文字通り "格別" でした。
ヨダセアSeaYoda

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