タイトルからしてどんな凄腕スパイがロメール色に染められて登場するのだろうと期待させる監督晩年の作品。
実話ベースのフィクションにせよ当時(1930年代)の欧州各国のパワーバランスなど歴史的な素養を持ち合わせていない自分にとっては、いつものロメール的会話劇が100%楽しめず。
夫に対する妻の不信感が芽生え出した辺りから仲睦まじかった夫婦の行く末が気になって仕方ない。この夫の煙に巻くような話術が鼻につき話せば話すほどストレンジャー感が増して行くのに対し、妻の方はその話術に翻弄され健気さが増して行く。ラストは気の毒の一言…。
政治的理解は早々に諦め、夫婦の顛末のみに注目して観賞するも良し。ハラハラドキドキ皆無のスパイ映画。