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エル・スールのSQURのレビュー・感想・評価

エル・スール(1982年製作の映画)
5.0
諸感情は人間にも宿るけれど、光と影の中にも宿るのだということに、気づかされる。
その日の空や街並みや山々の明るさ。
室内の照明の色合いや明度や顔にあたる角度。
窓から差し込む光の質感。
理屈の上では、どこでどのような光を浴びているかということと、その人がその時に抱いている感情や思考との間には、ほとんど関係がないはずだ。それなのに、記憶の中の「光」は、いつも感情と一体化している。
『エル・スール』のあらゆる場面のあらゆる光が、その光の明度や質感が、台詞よりも言葉よりも雄弁に登場人物たちの心を映し出している。

なんて美しいのだろう。
こんなに美しいと感じるのは、やはり映画でないと難しいと思う。


決して穏やかでも平和でもない物語なのだが、ただ座ってスクリーンを眺めているだけで心の中が自然と静かになっていく。構図や、BGMや、カットのテンポ、セリフの内容や速度、登場人物たちの表情や仕草、そして光、いろいろなもののとんでもなく複雑な組み合わせで、それは静かなまなざしになる。
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