OASIS

暗い日曜日のOASISのレビュー・感想・評価

暗い日曜日(1999年製作の映画)
4.1
第二次世界大戦が開戦する前夜のハンガリーを舞台に、名曲「暗い日曜日」に秘められた男女の逸話に基づく映画。

自殺者を誘発するとして有名な曲「暗い日曜日」
物悲しい旋律の裏に、憎悪や生への執着が込められ、ある者は自ら死を選びある者はその溢れ出る生命力に愉悦すら感じる。
そんな名曲に彩られたこの映画も、フィクションとはいえやはり名作なのだ。

レストラン「サボー」の支配人ラズロと、美しく妖艶な給仕イロナ。
そして、ピアニストとして雇われたアンドラーシュ。
イロナを巡って三角関係のもつれが起きつつも、お互いの嫉妬や想いをシェアしてなんとかその均衡が保たれるという不思議な間柄になっていく。
そこに現れたドイツ人の貿易商によってその関係が崩れ始め、舞台はホロコーストの恐怖に怯える街へと変わる。
奇しくも、暗い日曜日に込められたメッセージが聞く者に対して別々に働き、それが悲劇の引き金になってしまうという所に、曲の誕生と歴史的事実の巧みな融合を感じた。
「シンドラーのリスト」でも使用されている曲だけに、映画全体から虐殺の恐怖に揺れる色濃い不穏感が漂ってくる。

一見すると一人の女を巡る三人の男が主役の醜い愛憎劇に思えるが、オープニングである男が暗い日曜日を聞き息絶える場面から遡り、もう一度そこへ辿り着いた時に見える真実からは、やはりこれはイロナの物語であったと気付かされる。
イロナがつけた髪飾りをじっくりと映し出すラストシーンには溜息が出た。

作り話や迷信などには尾ひれ葉ひれがついて誇張されがちだが、悲劇的な曲には悲劇的な物語が付きまとうという当たり前だが至極真っ当な理由付けがなされていて納得させられる部分があった。
その曲にはどんな物語があるのか想像を広げていくのも良いが、この映画の様に事前にお話を頭に入れてから聞くのもまたオツである。

それにしても美しい給仕イロナを演じたエリカ・マロジャーンの白い肌や艶かしい裸体の色気はどうだ。
それに負けずとも劣らない目力は女性すら虜にするのも大いに分かる気がした。
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