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四月怪談のtakのレビュー・感想・評価

四月怪談(1988年製作の映画)
3.2
ある人の薦めで観て、えらく感動した映画に、是枝裕和監督の「ワンダフルライフ」がある。天国に召される前の死者たちを見送る人々を描く秀作であった。

一方、この「四月怪談」に出てくる柳葉敏郎扮する幽霊は、まだ肉体に戻って生き返るチャンスがある死者たちに肉体に戻るように説得をしている。彼自身も大切な人に何かをしてあげる経験なしに死んでしまったので、死後80年に渡ってそうした説得をしている、という設定だ。成仏させることが仕事の「ワンダフルライフ」の登場人物たちとは全く逆なのだが、その事を通じて自分も救われるという点では同じ。見終わってこちらも不思議な幸福感に浸ることができる。

これを観た頃、僕はこの映画の監督小中和哉氏に興味があった。それは「ウルトラマンガイア」の劇場版や2003年に放送されたアニメ「鉄腕アトム」で気に入ったからだ。世間的にはファンタジーの名手という評価のようだが、僕が勝手に抱いている小中作品のイメージは、”テクノロジーと人間”を一貫したテーマとしていること。

「四月怪談」はそれとは全く異なる世界。なれどこの映画にもそうした要素がちらほら見られる。ヒロインに好意を抱く超常現象好きの男子高校生だ。幽霊探知機を製作する程の変わり者で、彼の霊感がクライマックスで重要な役割を果たすことになる。霊とのコンタクトにテクノロジーを用いようとした彼が、死者の気持ちを思いやるという人間的行為でヒロインを救う(結果的にだけど)姿はとても印象的だ。小中監督は特撮映画に憧れて映画界入りしたそうだ。部屋にラドンを飾るこの高校生はもしかしたら監督の分身かもしれない。

ヒロインのその後をハッキリさせない結末が、人によっては物足りなさを感じさせるかもしれない。でも、ラストの水たまりを踏みつけるヒロインの何とも言えない表情が、爽やかな余韻を残してくれる。
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