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アパートの鍵貸しますのjonajonaのレビュー・感想・評価

アパートの鍵貸します(1960年製作の映画)
5.0
【ウソに加担してたら自分の本道にケチがつき、痛い目を見る】
ドツボにハマりました。
漫画ボーイズオンザランが好きなんですが、遠く離れた異国のこの古典名作からなぜか同じものを感じる。

負犬おとこが頑張る映画が好きな方なら、古典の中でもこれほど響く映画はないのではないでしょうか。
ベタなラブストーリーかと思いきやウェットに富んだ大人の苦い(苦汁に近い)ラブコメディでした。ジャックレモンの軽快なキャラクターが救いであり最大の魅力。

アパートの自室を上司の浮気のために貸し与えることで出世を目論んできた主人公。ピエロのように陽気でおどけた性格で、へらへらしたまま上司におべっかを使う。どこか憎めないところがある魅力的な腰抜け男をジャックレモンが快演。出世したもん勝ち、どこかで彼らの妻は悲しんでいるだろうが知った事ではない。
しかし散らかされた、ことの後の自室を掃除してるとふと考える…これでいいのか。

そんな中エレベーターガールに恋をする。なんとか彼女に振り向いてもらいたい。しかし不運なことにその娘は部長の愛人だったのだー!ガーン!!


脚本も撮影も素晴らしくて、印象深いシーンがとても多い名作です。
部長とヒロインの関係に主人公が気付いてしまう瞬間の演出など、ほんとに絶妙で伏線が効いている。
ラケットでスパゲティを茹でるシーンが印象的。笑えるし優しさに泣けてくる。どれだけ冷たくされても、自分が恋敵に勝てる見込みがなくても、社会的地位より大切なものを見つけて全力で戦う(武器は優しさとユーモア)主人公が大好き。見れば見るほど好きになりそうな一作です。
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