butasu

A.I.のbutasuのネタバレレビュー・内容・結末

A.I.(2001年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

元々はキューブリックが撮る予定で、その遺志を継いでスピルバーグが監督した作品。確かにキューブリックとスピルバーグをちょうど足して2で割ったような映画になっており、これはこれで面白かった。

正直前半は非常に退屈。"息子が昏睡状態で寂しいから"という理由でデイビッドを引き取ったときに「それ絶対に息子の目が覚めて捨てられるやつじゃん」と思ってしまい、案の定その通りだったので、ただただ胸糞が悪く、観ていてしんどかった。しかもその捨てられるまでがえらく長い。1時間弱もあるのだ。ここは20分くらいに出来たのではないだろうか。スピルバーグの情緒的で悪いところが出ているなぁという感じ。

ただ、捨てられて逃亡が始まってからは急にキューブリック的ディストピア感が満載で、俄然面白くなる。あまりに残酷すぎるロボ破壊ショーのえげつなさたるや。

しかしこの話、どう考えてもハッピーエンドにはできないがどうするのか、と思いながら観ていたら、終盤急に「2000年後…」となったのであまりに突飛で思わず笑ってしまった。そんなことある?無茶苦茶すぎる。

しかしここからがスピルバーグの真骨頂。細かいSF的整合性とか、最終的にあの後どうなったのかとか、そんなことは全部どうでも良くなる。あのラストシーンのためだけにこの映画はあったのだ、と強く断言できる、胸が痛すぎる感動のラスト。泣くわあんなもん。たった一日、でも彼にとっては何にも替えがたい奇跡のような一日。ママとふたりきりで過ごし、ママの愛情を独占できる、自分だけがひたすらママを愛し愛される一日。そしてその一日が終わることをデイビッドは受け止め、自分も初めての眠りにつくのだ。もうあまりに刹那的で美しく、大好きなラストシーン。

ハーレイ・ジョエル・オスメントはシックス・センスのときにはめちゃくちゃ可愛いと思った記憶があるのだが、本作で見るとそこまででもなかった。ただ演技力は抜群であり、とにかく彼の芝居が観ている者を泣かせにかかる。そしてジュード・ロウが完璧。美しいロボ感が半端ない。

前半がもうちょっとコンパクトだったらもっと高評価をつけたと思う。そのせいで映画自体も2時間半近くあるし、その点だけが本当に残念。とにかくラストが素晴らしいので、後半だけまた繰り返し観たい一作。
butasu

butasu