おなべ

バタフライ・エフェクトのおなべのレビュー・感想・評価

バタフライ・エフェクト(2004年製作の映画)
3.7
所謂タイムトラベル映画の中でも“傑作”と名高い本作、成程過剰な期待をも裏切らない非常に良くできた無類のSFスリラー作品だった。精緻なパズルのように組み上げられた至極の脚本、それを伏線が丁寧に施された映像で魅了する監督方の敏腕たるや、正に至高。

主演を演じた《アシュトン・カッチャー》は「世界で最も美しい50人」の2003年度版では《レオナルド・ディカプリオ》を抑えて事実上のNO.1になったという器量の持ち主で、本作では気まぐれな運命に翻弄される主人公のエヴァンを演じている。レニー役の《エルデン・ヘンソン》は作中で様々なレニーを表現する為に3週間の内に9キロを増減させ撮影クルーを驚かせたという。また、監督&脚本を務めた《エリック・ブレス》《 J・マッキー・グラバー》は本作において6年もの歳月をかけ仕上げた脚本を共同で監督した。

●あらすじ割愛

「何度も運命を書き換える、それは神にも許されない行為」

物語を注意深く刮目していると散りばめられた伏線がきちんと回収されているのが分かり、その中に多彩な人間描写を盛り込む事で、映像表現の幅も広がり、より洗練された愛や友情の物語の重層性が一段と増していた。特に究極の選択への持って行き方が巧いと思った。

また、役者の好演も本作を語る上では外せない。主演の《アシュトン・カッチャー》を始めとするメインアクターの役作りに引き込まれた。特にレニーやケイリーは何度も人格や境遇が変化するため難しかったと思うが、その変わり様はまるで別人だった。

神にも許されない行為には必ず代償が強いられる。例え最愛の人との決別の道を歩む選択を強いられようとも、タイムトラベルを続ける内に脳に負担がかかり次第に身体は蝕まれ命の危機に瀕しようとも、愛する人の未来を想い過去を変えようと試みるその甲斐性、或いは愛の力に忽ち心を揺さぶられた。まず、自分にはそんな選択は出来ないと思う。

感動を後押しするような《OASIS》のエンディング曲「stop crying your heart out」が心に響き、この映画のラストに相応しい素敵なラストを迎えられた。しかし、この《OASIS》の曲でハッピーエンドだと捉えられがちだが、本当は“相当切ない“ハッピーエンドである事を忘れてはいけない(飽くまでも個人的な見解で、感じ方も人それだと思うので全然ハッピーエンドと捉えてもいいと思う)。


【以下ネタバレ含む】


◉DVDの特典映像に別エンディングが収録されていた。一つは街中でケイリーを見つけたエヴァンがケイリーの後を追って終わる「ストーカー編」、もう一つは偶然声を掛け、お互い少し喋って「この後お茶でも…」みたいに後々くっつく予感を匂わせる「涙のハッピーエンド編」。「ストーカー編」に関しては今までの全てを無下にするだけでなく、同じ事の繰り返しになってしまい過去から何も学んでいない事になるからボツに。「涙のハッピーエンド編」は話の整合性が合わなくなるからボツになったそう。他にもディレクターズカット版ではさらに別エンディングがあり監督方の試行錯誤が伺えるが、それにしても、あんなに素敵な純愛を展開したのにも拘らず「ストーカー編」と標榜するのはちょっとどうなのか。
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