LEONkei

雨の午後の降霊祭のLEONkeiのレビュー・感想・評価

雨の午後の降霊祭(1964年製作の映画)
3.8
虚と実の間を錯綜する。


〝この計画は美しいほどに完璧。こんな純粋な計画はあり得ないわ〟、何かに取り憑かれたかのように真顔で妻は旦那に呟く。


これは誤解を招く安っぽいオカルト・ホラーチックな邦題だが内容は全く違い、タイトルだけなら敬遠するところも個性的な演技派俳優陣とイギリスらしい良い意味で地味な映画。

観てはいないが黒沢清監督もこの映画を『降霊』と言う作品でリメイク。

中年夫婦が幼い少女を誘拐するサスペンス調の不条理な犯罪ものと言った方が分かりやすく、何故誘拐しなければならなかったのか夫婦の異常な行動は時間が経つにつれ変化していく。

モノクロ映像に映し出される数々のシーンは登場人物の心理状態を反映させ、特にアッテンボローの複雑な感情を描写する大胆さと繊細さを上手に使い分けるカメラワークに感心する。


幸福を得るために他人の幸福を奪っていいのか…。

いい筈ないなんて誰もが分かっていても、目の前に奪える幸福がぶら下がっていたら…。

全てに於いて理不尽だと言うには簡単すぎるが、この世は科学では解明できない事はまだまだ有る。

虚と実の間を錯綜する、その果ては…。

虚仮の一心、人間のココロの中を覗こうとしても誰にも理解できないだろう..★,
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