【「コンタクトホーフ」のきらめく欠片】
ピナ・バウシュ作の舞台「コンタクトホーフ」を素人の少年少女のみで作り上げる10ヵ月を追ったドキュメンタリー。
劇場公開時にみていたのですが、やっぱり実際の舞台をみないと何とも言えんなあ…と思ううち、「コンタクトホーフ」の日本公演がやってきて、これは貴重!と行ってきて、その後に再見したのでした。
舞台体験後の実感からいうと、本作に顕れているのは氷山の一角だろうな、ということです。
理由あって90分にまとめたのでしょうし、この尺はみ易くもありますが、捨てられた貴重な瞬間その映像が沢山あったろうに勿体ないな…という思いが先に立ちました。
プロのダンサーに対し質問をぶつけ、その答えから舞台を組み上げてゆくというピナスタイルでは、演技もダンスも初めての少年少女たちを導くのは大変だったろうと思います。だから指導に当たる二人のダンサー、ベネディクト、ジョーさんの力量が垣間見られるあたりは感動モノ。
しかし経緯の始・中・終を、的確なポイントで見せてくれたかというと疑問です。どんな原因があって、どんな結果となったかがあまり見えてきません。せめて中心的演者が初めに、どんな質問を出したのかは教えてほしかったなあ…。
レッスンの過程で、意味がわからない、と正直に発言する少年がいて笑いを誘いますが、その前後を知りたくなるんですね。どの動きを指しているのか?彼としてはそれをどう解釈して動いているのか?…こうしたディテールが深まるところがあまりない。
しかしコラージュとしての面白さはあるし、よい「瞬間」が幾つもありました。
重要人物である「ピンクの女」を演じる少女が、その人物をどう捉えたかの返答がホントに見事で、ジョーさんが素晴らしい、と反応するのに頷いてしまいます。この少女は『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』にも登場しますが、ぎこちなさは残っていても、輝いていますね。
またお国柄もありますが、年齢関係なく人種のカラフルさが演者の豊かさに繋がっているところが面白いですねー。これはヴッパタール舞踊団の特色でもありますが。
最後に舞台のお披露目、その一端が見られますが、よくここまで仕上がったなあ、と素直に感心してしまいます。もちろん10代ならではの柔軟さで、感覚・感情を表す舞台だからこそショートカットできた面もあるのでしょうが。
…で、結論としては…やっぱりもどかしい。だからこの10代版「コンタクトホーフ」の舞台を通して全部、みてみたい!(笑) 映像だけでもいいからどこかでみる機会、ないものでしょうか。
<2014.3.31記>