半兵衛

まってました転校生!の半兵衛のレビュー・感想・評価

まってました転校生!(1985年製作の映画)
4.5
日活がロマンポルノの合間に造っていた児童向け映画の中でもトップクラスの傑作。大衆芝居の一座の息子が、32回目に転校してきた小学校で様々なテクニックを駆使して同級生たちと仲良くなっていく様をユーモラスに描いている。

ちょっとませた、でも実は勉強が苦手な主人公を皆川欣也がのびのびと演じていて、他の小学生役の子供達もみな好演。それ以上に、彼らを見守る大人たちの演技が明るく、優しく、それでいてみな生活のバックボーンを感じられるところが単なる子供向け映画にしていない。元子役だった新井康弘の先生や、主人公の両親を演じる蟹江敬三と入江若菜、主人公と仲良くなるヒロインの少女の両親を演じる中田喜子(滅茶苦茶美人)と沼田爆…。

ロマンポルノを初期から後期までずっと支え続けた藤井克彦監督の演出も冴えていて、序盤10分くらいで登場人物の設定や主人公の一座がどういう暮らしをしているかを過不足なく描く演出に舌を巻く。また「無抵抗都市」を思わせる主人公とヒロインの別れのシーンも印象的。また旅芸人の演劇のシステムを詳しく描いているため、主人公の設定をすんなりと受け止められる。

主人公が一座の事情でまた別の地方に移ってからはややタルくなるが、「伊豆の踊子」のような旅芸人の悲哀を主人公が味わう名シーンがあるので許せる(両親ではなく、一座の老役者が主人公を慰めるのが○)。

そしてラストでタイトルの意味が解るのも見事。
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