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早春のkouのレビュー・感想・評価

早春(1970年製作の映画)
5.0
《性への興味》
伝説の青春映画といわれるだけあり、その魅力に酔いしれてしまった。みずみずしく、美しいのだが、とても残酷でパワフル。本当にすごい一作だと思う。監督はイエジー・スコリモフスキ。今となっては古い作品なのだが、決して色あせることなく、とてもユニークであり、新しさを感じるのは本当にすごい。

主人公は高校を中退し、公衆浴場で働くことになった男の子。彼は同じ職場にいる年上の女性に恋をする。映画中、笑える部分がたくさんある。彼が公衆浴場に来る女性たちに詰め寄られて逃げたり、恋した女性がクラブから出てくるのを待つために、何度もホットドッグを買ったりするシーンはとてもコミカルだ。しかし、次第に主人公の挙動がストーカー的になり、彼自身の精神が病んでいく。

終盤、主人公はある展開を迎え、そして劣等感を味わうことになる。それは、彼自身の幼さ、自分の身の丈を知る場面でもある。彼はどこか大人の女性への憧れを持ち、自分の中での女性のイメージを膨らませていくのだ。その悲しさ、痛々しさというのは目を背けたくなるほど。思春期の性への興味、一方的な偏愛。初々しいながらも痛々しく、残酷。

今でもすべてのシーンを思い出せるほど映画のビジュアル的にも見事。ラストシーン、プールである物を探す場面などファンタジックでもある。多くの要素の詰め込まれている、とても素晴らしい傑作だった。
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