このレビューはネタバレを含みます
新しい方の3作目までは見たことがあったけど、ちゃんと今作から続けてみたいなと思って鑑賞。ちょっと前にも同じことを思ったけど、その時はどれか1作だけが何故かディズニー+では見れなくて歯抜けになるのが気持ち悪かったので断念していた。
いざ見てみて、68年の映画とは思えないほどのクオリティでびっくりしたし、今見ても忖度無しで面白かった。『怪獣総進撃』が68年ってことを考えると、まあ『怪獣総進撃』も凄いんだけど、かなり画作りが綺麗だなという印象を受けた。
冒頭の「スチュワート」というセリフからミイラ状態のスチュワートを見つめるカットになり、その時のホラーBGMのような音が実は船の軋む音で、水が流入してきて湖に沈んでいく船のカットに移る…という流れがあまりにも芸術的で圧倒された。完璧に心を掴まれた。どうやって撮ったのかもよく分からない。そもそもエイプの出来が凄まじいことも含め美術全般のクオリティが尋常じゃない。
ただまあ気になることとしては、即脱出するしかなかったとはいえ着陸したときにもっと大気や水質がどうなのか気にかけるセリフなどがあっても良かったと思う。現代のSF作品なら当たり前にできてることが当時だとまだできてなかったのかな。他にも、喉を怪我して喋れないという展開はめちゃくちゃ面白いけど、もっとジェスチャーで伝えられたはずだし、そもそもエイプ達の物分りが悪すぎるのも気になった。テイラー含め、「ここが地球である」ということから、まあ目を背けていたんだろうけど、視野狭窄すぎて論理性の欠片もなかったのがまあまあなストレスだった。どうせならもっと権力者側がしっかりと弾圧する感じにしてほしかったのに、作品としてもあくまでも議論っぽい体裁を保ってたのが惜しい。作中のセリフでもあったけど、若干茶番に思えなくもなかった。
ただ、エイプたちの平均的な知能レベルが我々人間と同じとする証拠はどこにもなかったし、仮に人間よりもほんの少しばかり低いと仮定するなら、文明の発達具合、あの場に居合わせた有識者たちの愚かさ具合、真実を知っていて隠蔽しようとしていたザイアスの誘導的な振る舞い、恐怖、信仰などを考慮すると「エイプたちの物分りが悪いという指摘は間違っている」という反論も一理あると思う。見ていた所感としては悪く感じたけど、テイラーに感情移入し過ぎてた可能性も否定しきれない。まあそのテイラーの説得する姿勢に違和感があったからこういう感覚に陥った気はする。
もし仮に宗教的な描写がなかったのなら本当に茶番だったと思う。途中に挟まる子供に見つかった集会みたいなシーンとか「巻き物」に関する言及とかが凄く世界観を広げていたように思う。「スチュワートにイブになってもらう」みたいな気持ち悪いセリフとかからキリスト教モチーフなのは分かった。2000年って言う経過年数もほぼ西暦と同じだし意識してるのかな。でも巻き物は1200年前に書かれてるらしいしどうなんだろう。
最後の自由の女神をみて絶望するシーンは凄く印象的だけど、映画のオチとしては分かりきってたことだから弱いかなとも思った。テイラー自身も本当はかなり早い段階で気付いていて言い聞かせるように「同じ惑星かどうかは分からない」と言っていたんだろうしそれも分かって見ていたけど、「絶望するオチで終わらせたい」という意図が見え隠れするのが少し残念だった。「実は地球」という真実を「匂わせてオチに持ってくる」という作りにしたいのは当時としては分かるけど、今見ると「匂わせるほどのことじゃなさすぎる」のが辛い。
ノバ役のリンダ・ハリソンさんが凄く美しかった。頭が良くなくてポケ〜っとしてる顔が可愛すぎてそりゃテイラーも気に入るよなと。まあ「イブ」発言とか状況とかも踏まえて若干の気持ち悪さは常にあったけど、ノバの美しさが次回作でも光ることを願う。
色々書いたけど当時のSF作品が今と比べて抑えるべき所を抑えれてないというだけで、普通にめちゃくちゃ楽しめた。めっちゃお気に入り。