さうすぽー

ファニーとアレクサンデルのさうすぽーのレビュー・感想・評価

ファニーとアレクサンデル(1982年製作の映画)
4.7
自己満足点 92点

今年も終わりですね。
自分もこれが今年最後のレビュー投稿になります!

北欧映画の巨匠イングマール・ベルイマン監督が82年に製作した長編映画。
ずっと観ようと思っていた作品ですが、先日渋谷のTSUTAYAに行ったらありまして、時間に余裕のある年末に観賞することが出来ました。
何せ長いので(笑)

上映時間は何と311分(5時間11分)!
4時間半あるヘヴンズ・ストーリーよりも長いので自己最長記録更新です!

※自分はベルイマンの人生や境遇等も知らない上に北欧の作品についてかなり疎いです。なので、映像の表現や脚本が凄いくらいしか言えない素人目線でのレビューである事をご了承下さい。


主人公のアレクサンデルの家族であるエクダール一家のおよそ2年間を描いた群像劇。
一応ファニーとアレクサンデルというタイトルですが、その二人を取り巻く家族や親戚にもスポットが宛てられていて、その家族と親戚それぞれの人物の関係性や変化をアレクサンデルの視点を中心に描いている作品。

ホームドラマのような内容で5時間あるにも関わらず、描かれるのは約2年間という内容ですが、この独特で美しい世界観には物凄く惹かれます。
ベルイマンの作品は他に「叫びとささやき」と「仮面/ペルソナ」を観ていますが、5時間以上という尺であるにも関わらず他の2作品よりも引き込まれました!


まずは映像の美しさです。
各フレーミングや色彩表現、美術セット等全てが完璧なまでにきらびやかで美しいです!
どうやら劇場用の映画として3時間版を製作された後に5時間の完全版をTVで放映されたとのことで、スウェーデンの巨匠で評価されてるが故に出資が多く募れたとか?

とにかく冒頭から凄いです!
舞台会場を模したミニチュアの前を数本の蝋燭で照らし、その幕が開くと主人公の顔が映し出されるワンシーン!
恐らく、「これはアレクサンデルの物語で、その幕開けだ」という監督の合図なのかもしれません。
本当に惚れ惚れしてしまいます。

お金持ち一家を象徴させる絢爛な衣装、赤を貴重とした豪華で美しいエクダール家の様式。

映像、衣装、美術、撮影、
どれを取っても正に「豪華絢爛」と言わんばかりのこだわり様で、外国語映画にも関わらずその年のアカデミー賞の撮影賞、美術賞、衣装賞を取ったのは必然だったと思います!


また、妹のファニーと主人公アレクサンデルの演技も非常に良かったです。
恐らく、通常の演技指導と違う方式で撮られたのかもしれません。
主要人物でありながら、基本的に台詞は大人キャストが多く、子供にはあまり台詞を発しておらず、代わりに目線や表情を多く映す場面が多かったです。
これを観て、是枝裕和の「誰も知らない」に出てくる柳楽優弥を連想させました。
子役はどうしても長い台詞が覚えられなかったり、細かい動きが出来なかったりしますが、代わりにそれを抜いた演出をすることによって子役の演技が非常に上手く見えたし、キャラクターの心情も解りやすかったです。


ストーリーの内容は子供の虐待や父親の死、主人公が見える父や子供の亡霊や死神等、重苦しい展開もありましたが、他のベルイマンの作品の比べるとそこまで報われない内容では無く、思ったより楽な気持ちで観れました。

また、大人のキャラクター達の台詞回しがロシア文学を彷彿とさせるほど非常に長い時もあったり、話の展開がスローな時が多々あったりするなど、多分何回かカット出来る所はあると思います。
しかし、不思議と映画を観ている間には「早く次行ってほしい」という風には殆どなりませんでした。

退屈に感じないという事は、脚本がそれほど秀逸であったのだと思います。
...第1部のクリスマスパーティーを除いては。

第1部のエクダール一家のクリスマスパーティは90分まるまる使います。
正直そこは非常に長いし退屈に感じました。とりあえずクリスマスパーティで盛り上がる場面を半分くらいに削って、その後にそれぞれの夫婦間のやり取りをメインにした方が良かった気がします。


とは言え、5時間11分という非常に長い上映時間であるにも関わらずこれだけ高く評価されてる理由が理解できます。
自分も見終わった後、心地良い達成感と「いい経験」をしたという満足感がありました。
ただ、自分はこれ以上長い映画を観れる自信は無いしこの映画も一生のうちにもう一度観れるかどうかは解りません(笑)


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今年も終わりますが、これだけ大変だった年はなかなか無いです。
自分も非常に辛い年ではありましたが、その代わり新しい映画に出会う機会には恵まれました。
来年は学業で忙しくなるので映画を多く観れませんが、レビューは欠かさず書いていこうと思います。

それでは皆さん、良いお年を!