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ものすごくうるさくて、ありえないほど近いの1610のレビュー・感想・評価

4.2

わたしは子供の頃に、大きく衝撃的な出来事があって(或いは小さくても自分にとっては衝撃的であったり、自分自身でもそれがなんなのか理解できていなかったりする)それがトラウマになって幻聴(?)のようなものに襲われることがありました。
それはこの作品の主人公の少年が感じていた幻聴のような、脅迫的な感覚に近いのかもしれません。
あの呪文のような、奇妙でざわざわとした感覚は今でも恐ろしいです。

ところで、この映画のタイトルは難解なメッセージであるように思います。
少年が鍵探しの軌跡を記録するための本に付けたタイトルでもある『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』という短文。

『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』ものとはなんなのか、考えた時に、真っ先に思い浮かんだのが前述の、トラウマのような感覚(言葉にするのが難しい)でした。

ものすごくうるさくて、ありえないほど近い、自分にまとわりつく恐ろしくてもどかしい感覚に、自分なりの答えを見つけようと、父が残した鍵が、開けるものを探しに出かけます。
この作品はおそらく少年が、『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い=自分が乗り越えるべきトラウマなどの感覚、壁』に立ち向かうために葛藤し、成長していく物語なのではないかと思いました。

9.11を題材に作品を描く故に、単純な物語とはいかず、このような難解な作品になってしまっていますが、自分なりにでも、監督が伝えたいメッセージ性を読み解いていくと、段々とこの作品の良さが分かっていくような気がしました。
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