大大

ものすごくうるさくて、ありえないほど近いの大大のネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

・シナリオの型は典型的な「金の羊毛」(ひとつのゴールに向かうけども、その過程で、ゴールにあるものよりも大切なものを主人公が手に入れる)

・身近な人の死を、どう乗り越えていけばいい?という映画です。

・身近な人を亡くした人にとっては、何かしら必ず後悔や、許してほしいことがあるものだと思います。

・それを日常のなかで、それとなく感じないようにしているんだけど、心の奥底でそれが確かにある。

・そんな奥底にある感情に向かって、一枚一枚心の部屋を開けていって、深みに入り込んでくる映画。しかも、許しを与えてくれる。

・心の最終地点が、鍵の探し主がいる会社の一室になるように、シナリオが設計されている。

・鍵の謎を解いていくにつれて、このゲームが終わってしまうことの切なさと、直視したくないことに向き合わなければいけない時が近づいているという恐怖感が、緊張感をもって高まっていって、本当によくできている。

・主人公にとっての「人生最悪の瞬間」の描き方が、本当に言葉を失う。

・結局、鍵が入っていた花瓶というのは、主人公の父が記念日のプレゼントとして買った、何でもないものだった。

・その中に入っていた鍵を見つけた主人公が、「これは父が僕に課した謎解きゲームなんだッッ」と勘違いをするわけですが、この心理思考は痛いほど共感できます。

・亡くなったあの人は、きっと私の事を見てくれているんだ、という証を求める気持ちというのが、自分にも身に覚えがあるから。

・それは勘違いで、思い込みでファンタジーかもしれない。

・でも実際のところ、父が生前、主人公に謎解きゲームを仕掛けていたのは、障害を抱える子供に、社会や他人との交流の機会を与えるためでもあった。

・要するに、幸せになってほしいということ。

・勘違いから始まった謎解きゲームは、沢山の同じ傷を負った数多くの人と出会い、与えることの大切さを学び、自分の財産を再発見していくきっかけになる。

・途中の葛藤のなかで、他人の心の壁を躊躇なくぶち破っては、人との距離感がうまくとれない主人公の個性が、映画の中で効果的に活きている。

・勘違いから始まったものだけど、結果として、父の子供に対する願いは、そっくりそのまま叶っている。

・そして主人公が、父の本当の気持ちや願いに、気づいていくという(泣)

・空の上にあの人がいると思いたいけど、本当はいないかもしれない。でも、それが正しいか正しくないかは重要じゃなくて、その人の想いというのは、ものすごくうるさく、ありえないほど近くに生きているということを、目で見える形で残してくれている映画です。ありがてえ。。。
大大

大大