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フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラのtakのレビュー・感想・評価

3.4
#「キル・ビル」のルーツを探せ
(その14)

 タランティーノはユマ・サーマンとルーシー・リューに、"「キル・ビル」は二大女優地球最大の決戦だ!"と述べた。実際に二人はこの「サンダ対ガイラ」を参考に(何の?)とビデオを見せられた、とか。ザ・ブライドがオーレン・イシイを追って東京へやって来る。飛行機が東京へ近づく場面を、タランティーノはミニチュアを使ってコテコテの特撮映画風に仕上げた。ゴジラのスタッフに都市のミニチュアを借りて撮影、空は松竹の和製ホラー「吸血鬼ゴケミドロ」みたいに!という注文があったというから・・・すごいよね。ちなみにタランティ-ノは「vol.2」を、本作の英語タイトルをもじって"The War Of The Blond Gargantuas!"(金髪巨大女戦争)と呼んでいる。とにかくお好きなようだ。

 お話は前作「フランケンシュタイン対地底怪獣バラゴン」の続編にあたる。人間の味を覚えて次々と船や町を襲う怪物(ガイラと呼ばれるようになる)。それは前作のフランケンシュタインの体の一部が蘇生したものだった。空港で女性事務員を食べて衣服をペッとはき出すディティールも真に迫っている。自衛隊のメーサー殺獣光線車などの攻撃で怪物は倒されたかと思えたが、そこにもう一体の怪物が出現!。これが前作で死んだと思われていたフランケンシュタインだった(サンダと呼ばれる)。いわば弟分のガイラが人を襲うのをサンダは許せない。ついに両者が対決することになってしまう。山村から川をくだり、市街地、そして海へと場を移しながら戦いは続く。そして・・・。

 それまで怪獣の着ぐるみが主流だった東宝特撮映画に、人間型の怪獣が登場したことでバトルがよりスピーディーになったのは見応えあり。サンダにとって育ての親でもある水野久美との関係や、ガイラが女性を手のひらにのせる場面など、どこか「キング・コング」を思わせる。メアリー・シェリーのフランケンシュタインとは全く異なるものではある。しかし根底に流れる、人によって造られながら人に受け入れられない人造人間の哀しみは同じ。人間に対する愛情と憎しみが二体の怪獣に表現されているのだ。
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