ミサホ

隠し砦の三悪人のミサホのレビュー・感想・評価

隠し砦の三悪人(1958年製作の映画)
4.3
記念すべき✨1000レビュー✨は、観るのがずいぶん先延ばしになってしまった本作を。

強くて、美しくて、知的な女性像が見られる。それが印象的だった。内容は男臭いけれど、その男臭さが女性の魅力を際立たせる。

その女性が秋月家の後継ぎ“雪姫”だ。

戦国時代。
秋月家は山名家との戦に敗れた。

雪姫の国は負けたのだ。敵に捕まったら打首は免れない。懸賞金が掛けられて、敵国の武士はもちろん、町民や百姓も殺気立っている。

秋月家の侍大将の真壁六郎太(三船敏郎)は雪姫と隠し砦に誘い込んだふたりの百姓をひき連れて、同盟国である早川領に向かう。

ところが、その早川領に行くには、敵陣を通るしかない。しかし、その行く先々での突破口を探る六郎太のアイデアが面白い。

そのアイデアをことごとくぶち壊し、仲間を危険に晒すのが、強欲で、下品で、身勝手な百姓のふたり、太平(たへい)と又七(またしち)である。

でもなんだかこのふたり…憎めないのである。人間味のある、やることなすこと裏目に出る、チャンスとピンチが交互に訪れる、お笑い的なキャラクターは黒澤作品の変化球であり、良いスパイスだ。

もちろん三船敏郎の豪傑な立ち振る舞いと軽やかな身のこなしは本作でも見られます。田所兵衛との“槍での対決シーン”は冗長に感じたけれど、あの緊迫した対決があってこそ「裏切り御免!」が活きたのだ。

そして、個人的に一番印象に残った雪姫の数々のシーン。終盤、捕えられた時の、彼女の言葉にはグッと来たなあ。田所を嗜めるあのシーン。雪姫は16歳である。ただの小娘ではない、一国の主となる人物なのだ!

その器の大きさたるや
さすが…である。


黒澤映画に欠かせない、霧や月、風や土埃そして雨…といった自然と、どこからわいてくるのだ?と思わせる大量のエキストラが演じる迫力の映像は、本作でもたっぷりと楽しんだ。
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