ゴリラ

パイラン/ラブレター パイランよりのゴリラのレビュー・感想・評価

3.8
【会うこともなかった妻からの手紙】
浅田次郎の『鉄道員』に収録されてる短編『ラブ・レター』を韓国で映画化

高校の頃、日本版の『ラブ・レター』(※森崎東監督)を観て号泣した記憶があったので、韓国版を鑑賞することに

░░░░░░░░ 出演・監督 ░░░░░░░░

日本版はミキプルーンおじさんこと中井貴一主演だったが、韓国版はハンマーおじさんことチェ・ミンシク

偽装結婚の妻役には中国人女優セシリア・チャン(北川景子似の美人)

監督は『私たちの幸せな時間』『ブーメランファミリー』のソン・ヘソン

░░░░░░░░ あらすじ ░░░░░░░░

40歳を過ぎた独身男カンジェ(チェ・ミンシク)は、チンピラとして毎日ふらふらと暮らしていた。そんなある日、仲間の身代わりで収監されることになっていた彼は“妻”が亡くなったという訃報を突然知らされる。今までそのことを忘れかけていたカンジェだが、その妻とはかつて小金欲しさに偽装結婚した相手だったことを思い出す。彼女はパイラン(セシリア・チャン)という名の中国人。カンジェは一度も会うことのなかったパイランの遺体を引き取りに彼女の住んでいた町へと向かう…

░░░░░░░ ダメ男カンジェ ░░░░░░░

韓国版は原作と比べると主人公カンジェのバックグラウンドにフォーカス

裏ビデオを未成年に売ったとして収監されていたカンジェが釈放されて真っ先に向かったのがゲーセン…(笑)
筐体の上で爆睡し、起きたと思ったら若者からタバコをせびり、店長からはメダルをせびる始末…
一緒に組に入った友人ヨンシクは組長に成り上がるも、カンジェは下っ端のまま…
他の組員からはナメられ、ヨンシクには呆れられ、辞めて田舎に帰ったらどうかと勧められる

と、まぁそんな具合の情けなく、うだつが上がらないカンジェだったが、会ったこともない妻パイランを弔う旅路で彼女の孤独を知り徐々にカンジェの中で何が変わりはじめる…

この心情の変化をミンシク先生が繊細な演技で魅せる!

他の方のレビューに書かれていたが、チェ・ミンシクのフィルモグラフィーの中でも最も愛着のある作品だというのも納得!

░░░░░░孤独を抱えるパイラン░░░░░░

一方パイランは母の遺言である「私が死んだら韓国の親戚を訪ねなさい」という言葉を信じ韓国に渡るも、親戚はカナダに移住したと知り、天涯孤独のまま異国の地で一人途方にくれる
あてもなく歩くパイランの目に飛び込んできたのは看板に書かれた“希望”の文字
それに惹かれるままビルの中へと足を運ぶ…

セシリア・チャンの醸し出す不憫な佇まい、そして会ったこともない旦那への一途な思いを持ち続ける純朴さが涙を誘う

░░░░会うこともなかった夫婦の共鳴░░░░

寂れた田舎の港町で、孤独と不安を抱えるパイラン

情けない人生を送ってきたことへの後悔、友人に捨てられ孤独を抱えるカンジェ

会うこともなかった戸籍上の夫婦の孤独が共鳴する

情けなさ、侘びしさ、寂しさ、孤独…

雪積もる港町の風景がそれらを引き立てる

░░░░░░░░░ まとめ ░░░░░░░░░

日本版を見たのが20年前なんであまりちゃんと比較できないが、純愛ものという意味では2000年前後の韓国映画と相性がいいなと思った
『ラブ・レター』を観ていたので最大の泣きポイントである“あの件”ではそれほど泣かなかったが、ちゃんと丁寧に作られた作品なのは伝わったし、何より繊細なミンシク先生の演技が素晴らしかった!

韓国では『チング』と公開が重なったこともあり興行は奮わず、不運の名作と呼ばれてるとか…

孤独×孤独な作品がお好きな方にはオススメ!
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