オレンチ

エンジェル ウォーズのオレンチのレビュー・感想・評価

エンジェル ウォーズ(2011年製作の映画)
3.5
BvS鑑賞前夜にコレ。
予習的な繋がりはないけど、ザックの趣味やエゴやノウハウが凝縮されているため、ザック・スナイダーがどんな監督か知るには最適な映画。

ストーリーは心に残るような内容ではないし、度肝を抜かれるような内容でもない。

しかし何も映画はストーリーが全てではないと思う。
表現力と言えば良いのか、芸術点で言えばかなりの傑作。まるで質の良いPVを観ているかの感覚で飽きがこないし、そもそも使われてる曲が興味をそそる。

皆が"Suker Punch"(不意打ち)を喰らうような目を奪う少女のダンスをザックワールド全開で表現する発想は素晴らしいと思う。

このザックワールドの内容がサムライガトリング、ナチゾンビ、オークとドラゴン、ディストピアなロボットetc…これが厨二心をくすぐり尚良い。ハマる人はとことんハマる。

土台を精神病院にもってきたのもザックの作風ならではの工夫がある。
精神病院に求められる雰囲気は不安や恐怖なので、冷たい色温度やブリーチバイパスの様な色使いが好まれる。
この条件がCGを多用するザックの作風に限りなく有利に働く。

実写とCGの間にある最大の課題はCG独特の違和感である。
その違和感の原因は光が当たって出来る微妙な影の存在だ。この影の表現が非常に難しく、鑑賞者が感じる違和感が生まれる。
それを隠すためにザックの作品はほぼ暗いカラーの作品となる。
これは『パシフィックリム』にも言えることで、イェーガーが暴れるシーンの殆どは夜でしかも雨が降っている。唯一の昼間のシーンであってもイェーガーが映るのは逆光だった。

ザックの作品にも例外があって『ガフール』のようにフルCGであれば違和感丸ごと"フルCG"というスタイルにかき消される。
だからこそ、明るいシーンが多い『マン・オブ・スティール』には驚かされた。

余談だけど、『スパイダーマン2』にもCGが多用されているが、前作『スパイダーマン』とCGによるピーター・パーカーの顔とドックオクの顔を見比べてみるとCGの出来は一目瞭然である。
これは『スパイダーマン2』から新しい技術が使われたからで、この技術というのがまずCGにしたい対象物の模型を実際に作り、カメラと同時に前後から光を当て、回転しながら撮影する。
これによって光が生み出す影のデータを集めた上でCGを作成するというものだ。

今この技術がどうなっているかは知らないが、こういう発展は嬉しいばかりだ。