櫻イミト

サクリファイスの櫻イミトのレビュー・感想・評価

サクリファイス(1986年製作の映画)
3.5
言葉がうまく話せない少年、水、不仲な両親、ダ・ヴィンチの絵、風、マタイ受難曲、空中浮遊、去り行く父、火事、・・・これらはタルコフスキー監督の「鏡」のキーモチーフである。それがそっくりそのまま今作のキーワードモチーフとなっている。映像詩だった「鏡」を「ドラマ」に仕上げたのが今作だ。両作の違いはラスト。「鏡」では少年アンドレイが言葉にならない言葉を叫ぶ。「サクリファイス」では言葉を発せなかった息子が言葉を発する。この作品は監督から未来を生きる息子への遺言でもあった。「サクリファイス」の意味は「犠牲」。核の時代の黙示録ともなっているこの映画が完成した直後、1986年4月にチェルノブイリ原発事故が起きた。そして同年12月に監督はこの世を去った。
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