もっちゃん

地獄の黙示録・特別完全版のもっちゃんのレビュー・感想・評価

地獄の黙示録・特別完全版(2001年製作の映画)
4.0
コッポラがゴッドファーザーで儲けたお金をほとんどつぎ込んで作った戦争映画。それだけの迫力とクオリティがある。しかし、前半と後半のストーリー展開のギャップに少々困惑する部分も否めない。

ベトナム戦争で戦線から離脱し、心の底から普通の生活に戻れない主人公ウィラードが軍上層部の要請により、軍の裏切り者カーツ大佐暗殺のためにベトナムに戻されることになる。そこで前線に立ち、思い知らされるのは米国軍の腐敗とカーツ大佐の行き着いた思想の如何であった。

前半ではとことんベトナム戦争を再現することに努めている。有名な「ワルキューレの行進」に合わせてのベトコン一掃シーンでは空撮や爆発、ナパーム弾まで再現し、リアリティを追及している。また、頭のねじが外れた司令官や精神をやられた兵士など軍の腐敗っぷりをしつこいまでに描写する。この迫力は圧巻。

そして後半。カーツ大佐の元へと進むにつれて戦争の光景は常軌を逸していき、ウィラード自身も戦争の迷宮へと誘われていく。
後半に入ってから明確なメッセージが見えづらくなっていき、ジャングルの中のフランス人集落やカーツ大佐の王国のシーンなどは何を意図したものなのかはハッキリと分からなくなっていく。役者もラリって撮影も行き詰まり、監督自身が追いつめられているのが伝わってくる。

だが、そうした行き詰まりと相まって混沌とした世界観がこの作品を戦争映画の金字塔に押し上げているのだと思う。第一「戦争」に対して明確な答えなど用意されておらず、おいそれと出る答えでもない。「迷走」、それ自体がコッポラが出したこのテーマの一つの回答なのかもしれない。