向いている人:
①フェイスブック立ち上げの話に「興味がない」人
②昔の自分の言動で後悔していることがある人
③青春映画が好きな人
アカデミー作品賞にもノミネートされて、かなり評価が高くて、私も何度か見ていたのですが、久々に見直してみました! とても大好きな映画です!
ハーバード大学に通うマーク・ザッカーバーグは、「ポーセリアン」に所属する学生たちがうらやましかった。彼女と別れたショックから立ち上げたサイトをヒントにして、親友のエドゥアルドとともに、ネット上でコミュニケーションが取れるサービスを立ち上げることにするが、先にはいくつもの障害、そして出会いと別れが待ち受けていた……。
本作、冒頭9分の会話シーンが非常に重要なので、開始早々から気を抜けません。全体的にセリフは早口で情報量が多く、カットも細かいあたりは、『シン・ゴジラ』を思い出しました。「ながら見」には向かない映画かもしれません。
本作の監督デヴィッド・フィンチャーといえば、『セブン』など胸クソ映画でおなじみです。本作も、後味がいいものでは決してないですが、(おそらく)誰もが過去にやってしまった「失敗」と「後悔」についてのお話になっているので、驚くほど見やすいです。人も死なないです。
まず、主人公のマーク。こいつは本当に調子のいいやつで、思ったことを順序だてずにブワーッって話すんですよね。
冒頭、恋人役のルーニー・マーラとの会話シーンで、「あっ、こいつダメだ……頭いいんだろうけど人間として……」という気持ちになります。
その後も、何か感情的に高ぶると恐るべき早口でまくし立てて相手を閉口させます。
一方の親友・エドゥアルドは、アンドリュー・ガーフィールドがかもしだす「すさまじくいいやつ」感がバリバリで、マークの古女房的にうまいこと付き合っているわけですが……。
さらに、いまや『コードネームUNCLE』でおなじみアーミー・ハマーが1人2役(!!)で演じるウィンクルボス兄弟と出会ったり、ジャスティン・ティンバーレイクがすさまじいカリスマ性を発揮しているショーン・パーカー(要はネットビジネスで成功した人ですね)と出会ったり、いろいろな人と出会って刺激を受けていくマーク。
それに従って、彼の見ている世界はどんどん広がる。彼のビジネスもどんどん広がる。
でも、本当の彼を見てあげているのは誰? 彼の商品ではなくて、本当の彼を。
そして、マークの友達はどうなる?
マークが本当に見ていたのは?
このあたりが、この映画の味わいです。
「あの時、ああ言っておけば……」「なんてバカなこと言ったんだ……」なんていうのは、誰もが抱える後悔ではないでしょうか。怒りに任せて、ふざけてついうっかり、あるいはプライドが邪魔をして。後になってみるとしょうもない理由で言ってしまった、あるいは言えなかったこと。
私もあります。好きだった人に思いを伝えられなかったり、怒りに任せて相手を傷つけることを言ったこともあります。
たとえ評価額10億ドルの世界的企業を作った人間でも、そうした後悔を少なからず抱えているし、彼が手に入れたかったものは、周囲が想像するよりももっと身近で、パーソナルなものだったかもしれない。
ラストの彼のクリック音が、私には、彼が人間性を取り戻そうとする最後のあがきに聞こえました。
思わぬところにビッグネームがいるのもこの映画の特徴。恋人役のルーニー・マーラはもちろん、『フィフティ・シェイズ』シリーズにも出ているダコタ・ジョンソンも一瞬だけ登場、さらに『ジュラシック・パーク』の男の子もマークのルームメイト役で出演しています。
デヴィッド・フィンチャーなので、画面の美しさ、デザイン性は一級品です。『ゾディアック』で現在のスタイルが確立されましたね。今回も絶好調。決して手持ちカメラにならず、見やすいです。画面が涼しげなので、夏に向いているかもしれませんね(←無理やりすぎ)。
私が好きなシーンは、ウィンクルボス兄弟がマークにアイデアを盗用されたといってハーバードの学長に直訴する場面と、ニワトリを虐待したうんぬんでもだえ苦しむエドゥアルドの場面です。どちらも最高に笑います。
本作は、マーク・ザッカーバーグの伝記映画というよりは、フィクショナルな青春映画です。私としては、『桐島、部活やめるってよ』とともに、青春映画の中の心の一本です。
ちなみに、友達になるなら断然エドゥアルドです。