yassi1000rr

マーサの幸せレシピのyassi1000rrのレビュー・感想・評価

マーサの幸せレシピ(2001年製作の映画)
5.0
自分のオールタイムベスト映画な理由をこれまで捉え切れていなかったが改めてレビューしなおしてみる。
マーサは職業人としての自分を全てと考えるような孤高な人物である。自分ひとりが創り上げてきた世界にこだわりや自負がありそれに従属する周囲を圧倒し距離を置くことで世界を守ろうとする。根底にある攻撃性は、人と対峙しないために培ってきた武器でもある。
その世界に姪っ子が突然飛び込んでくる。マーサにとってはノイズでしかなく、おかげで仕事上のトラブルまで起きてしまう。血の繋がりという動機はあるものの、初めて自分以外の他者との対峙を自発的に認識することとなる。0から1となるマーサにとっての他者という存在。はじめはぜんぜんうまくいかなくてくるしい。0を1にする過程は1を2に、そして徐々にこれまでの人生で周りにいた人たちのことが見えるようになる。
やがて、独りで居る時には全く見えていなかった夢を抱き、手にするようになっていくその心の開き様が素晴らしい音楽とともに描かれている。
キースジャレットの『country』泣くほどマイベスト。この映画を観る随分前から父のCD棚を物色して聴いた中でも特に好きだったキースジャレット独特のあのブツブツ喋りながら弾くやつが、劇中いい曲だなぁと耳をすましていたところに聴こえ、調べたらアタリだったことが理由のひとつめ。
ふたつめは、マーサと同じ気質が自分の母に、そして自分にもあることを無意識のうちに感じていたのかもしれない。今はそうであると認められる。ようやくこの映画が人生のどんな曲面でも自分に突き刺さる理由が纏った気がする。
yassi1000rr

yassi1000rr