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勝手にしやがれ!! 逆転計画のnetfilmsのレビュー・感想・評価

3.9
 冷水の桶に浸かった瓶ビール、七輪の網の上に置かれた松茸、炊きたてのご飯、ちゃぶ台に置いたビールをくいっと飲み干す雄次(哀川翔)を耕作(前田耕陽)がいつものママチャリで迎えに来る。2人乗りのチャリンコは海岸沿いを東へ。鏡の前で衣装合わせをする雄次は、耕作のキャベツは芯の方が好きか、それとも葉っぱの方が好きかの問いかけにも答えようとしない。たばこ屋の看板娘・サツキ(仁藤優子)に一目惚れした雄次は、早速、彼女に接近しようとしたがなかなかうまくいかない。その上、借金のカタに奪った車で事故を起こして、車を廃車にしてしまうわ、テレビは壊れるわ、麻雀をやれば負けるわで、すっかり運にも見放されたようだった。ようやく福引で当てた一等のウォークマンがきっかけとなって、雄次はサツキと仲良くなることができたのだが、ツキを取り戻そうと競馬に挑戦して全財産をスッてしまい、またまた落ち込むことになった。そんな折、ひょんなことから雄次は白い背広を着たヤクザの黒川(下元史朗)の絶命現場を目撃し、彼の手に握られた1000万円の入ったトランクを手に入れた、だが黒川は息をしており、すぐにそのことが黒川にバレたために金を返すことになるが、1000万は雄次が隠しておいた場所から消えていた。上納金を収めなかったことで銀星会から追われることになった黒川とともに、雄次と耕作も逃げ回る羽目になってしまう。

 哀川翔と前田耕陽の凸凹コンビの珍道中を描いたVシネマ『勝手にしやがれ!!』シリーズ第四弾。雄次は住み慣れた部屋を引っ越すが、2人の関係性は変わらない。今作ではツキにツキまくる耕作と、一貫して運に見放された雄次との対比を極端に描いている。「ここではないどこか」への登場人物たちの渇望はここでは語学留学を夢見るヒロインのハワイ行きとなり、天使のように見えた女の化けの皮が剥がれる展開はシリーズ1作目の『勝手にしやがれ!!強奪計画』と同工異曲の様相を呈す。心なしか脇を張る下元史朗扮するヤクザ像は『勝手にしやがれ!!脱出計画』の高部のように情に脆く、仁義に厚い昔気質のヤクザそのものである。たった1人で黒川組を取り仕切る黒川と雄次の一匹狼同士の友情、1作目の國村隼のような銀政界幹部・小笠原(SABU)の快演ぶり、1000万円の行方はいつしか追う者と追われる者の三者三様の追いかけっこに繋がって行く。立教大学の後輩である塩田明彦の脚本は、黒沢の脚本のような大きな破綻は抑えることに成功しているものの、逆にその破綻なき展開がやや物足りないきらいはある。哀川翔と前田耕陽の関係性がシリーズ中、最も不明瞭であり、大杉漣や洞口依子らの出番も必然的に少ない今作は、オリジナリティの面でも黒沢清の単独脚本だったシリーズ1作目を追尾する。
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