勝手にしやがれ!! 逆転計画の作品情報・感想・評価

勝手にしやがれ!! 逆転計画1996年製作の映画)

製作国:

上映時間:80分

ジャンル:

3.6

「勝手にしやがれ!! 逆転計画」に投稿された感想・評価

紫色部

紫色部の感想・評価

3.0
2018.10.21 CS

煙草屋の前に咲く山萩(?)の紫色、鳩の群れを散らす前田耕陽、アントニオーニ的な煙突のショット、左右からフレームインするヘッドライトの反復。仁藤優子の声質が良い!

このレビューはネタバレを含みます

工場に行く前の3人の後ろ姿のショットが本当にこのあと死んじゃうんじゃないかって思えた。シリーズのお約束的に死ぬのは絶対ないんだけど。
今回、特に前半哀川翔がめちゃくちゃ可愛い。
シリーズ随一ゆるい導入が終盤ひっくり返される感じがたまらない。この構成は最終作にも通じる気がする。
中庭

中庭の感想・評価

3.2
一作目に続き、哀川翔の恋心がタバコ屋の女に向けられ、結局は女が「悪」のイメージ、ギャンブルの魂を目覚めさせることによってあえなく破綻するのだが、それは決して彼を落ち込ませる事態にはならず、このシリーズにおける登場人物の失恋の気配はここでもいつの間に漂白され、感情に寄り添った動きなど一つも見せることがない。
黒沢清監督の「勝手にしやがれシリーズ」の第4作目。 

3作目同様のオープニングで始まり、「2人は殺せない、出国するなど2人を居なくすることができない」などの制約の中で作られた連作。 
このシリーズは、黒沢清監督が著書で書いているとおり、「2本ずつまとめて撮っていた作品。1作目&2作目、次は3作目&4作目…というように。」なので、オープニングやセットが2作ずつペアになっている。 

相変わらず、ものすごくいいかげんなチンピラ2人(哀川翔と前田耕陽)が、これまたヘタレなヤクザ達と繰り広げるドタバタ劇が楽しい。 

チンピラ哀川翔が、タバコ屋の娘にホレてしまって、自分が抽選で当たった(当時高価だった)ウォークマンをその娘に貸してあげる。娘は英語を勉強しているとのこと。 
そこに連れのチンピラ前田耕陽は抽選で「ハワイ旅行」が当たって英語の勉強する…という『かなり出来過ぎ』の展開が楽しい。 

チンピラ哀川翔が白服ヤクザ黒川から1千万円を失敬して、それを更にタバコ屋の父に盗まれて娘が競馬で使い込み…と続いていくが、もの凄いことは起きないこのシリーズならではの安定感。(笑) 

楽しい黒沢清監督作品である。
大金を軸に振り回される人々。
人間関係のリアリズムやドラマのリアリズムは一旦括弧に入れ、キャラクターがピタゴラスイッチのごとくリズミカルに運動する、その物理自体を面白く描くこと。
麻雀、競馬のギャグが異様に面白くて脚本クレジットで塩田明彦だと判明。凄いなぁ!
訳の解らんお金の脱力するやりとりの末に銃撃戦に発展するんだが工場の暗闇からベンツのヘッドライトが浮かぶショットの格好良さに後の傑作群やSF映画への志向を感じさせる。
後、所々哀川翔のアップが不穏で心配になる。それらが積み重なった後にクライマックスの銃声に繋がるから笑えても緊張が満ちる。
netfilms

netfilmsの感想・評価

3.9
 冷水の桶に浸かった瓶ビール、七輪の網の上に置かれた松茸、炊きたてのご飯、ちゃぶ台に置いたビールをくいっと飲み干す雄次(哀川翔)を耕作(前田耕陽)がいつものママチャリで迎えに来る。2人乗りのチャリンコは海岸沿いを東へ。鏡の前で衣装合わせをする雄次は、耕作のキャベツは芯の方が好きか、それとも葉っぱの方が好きかの問いかけにも答えようとしない。たばこ屋の看板娘・サツキ(仁藤優子)に一目惚れした雄次は、早速、彼女に接近しようとしたがなかなかうまくいかない。その上、借金のカタに奪った車で事故を起こして、車を廃車にしてしまうわ、テレビは壊れるわ、麻雀をやれば負けるわで、すっかり運にも見放されたようだった。ようやく福引で当てた一等のウォークマンがきっかけとなって、雄次はサツキと仲良くなることができたのだが、ツキを取り戻そうと競馬に挑戦して全財産をスッてしまい、またまた落ち込むことになった。そんな折、ひょんなことから雄次は白い背広を着たヤクザの黒川(下元史朗)の絶命現場を目撃し、彼の手に握られた1000万円の入ったトランクを手に入れた、だが黒川は息をしており、すぐにそのことが黒川にバレたために金を返すことになるが、1000万は雄次が隠しておいた場所から消えていた。上納金を収めなかったことで銀星会から追われることになった黒川とともに、雄次と耕作も逃げ回る羽目になってしまう。

 哀川翔と前田耕陽の凸凹コンビの珍道中を描いたVシネマ『勝手にしやがれ!!』シリーズ第四弾。雄次は住み慣れた部屋を引っ越すが、2人の関係性は変わらない。今作ではツキにツキまくる耕作と、一貫して運に見放された雄次との対比を極端に描いている。「ここではないどこか」への登場人物たちの渇望はここでは語学留学を夢見るヒロインのハワイ行きとなり、天使のように見えた女の化けの皮が剥がれる展開はシリーズ1作目の『勝手にしやがれ!!強奪計画』と同工異曲の様相を呈す。心なしか脇を張る下元史朗扮するヤクザ像は『勝手にしやがれ!!脱出計画』の高部のように情に脆く、仁義に厚い昔気質のヤクザそのものである。たった1人で黒川組を取り仕切る黒川と雄次の一匹狼同士の友情、1作目の國村隼のような銀政界幹部・小笠原(SABU)の快演ぶり、1000万円の行方はいつしか追う者と追われる者の三者三様の追いかけっこに繋がって行く。立教大学の後輩である塩田明彦の脚本は、黒沢の脚本のような大きな破綻は抑えることに成功しているものの、逆にその破綻なき展開がやや物足りないきらいはある。哀川翔と前田耕陽の関係性がシリーズ中、最も不明瞭であり、大杉漣や洞口依子らの出番も必然的に少ない今作は、オリジナリティの面でも黒沢清の単独脚本だったシリーズ1作目を追尾する。
佐藤

佐藤の感想・評価

-
最高。

工場に向かう三人を捉えたショットは、「不穏」「厭」なんて言葉で語られる今の黒沢清に通ずるものを感じる。
シリーズ化されているとは知らないで、黒沢清監督の「勝手にしやがれ!」だけで借りようとしたら店頭にこれしか見当たらず観てみた。
このシリーズの中では一般の評価は「普通」らしいが、私は幾つものシーンの俳優陣の動線の使い方が本当に流石だと思った。黒沢清監督は相米慎二監督の「セーラー服と機関銃」で助監督として入ったりして映像を学ばれたらしく、何処か似ていると思った。魅力的な長回しが多いのもそのせいなのだろう。ラストに「森のくまさん」の歌を主人公に歌わせたのも相米慎二監督の「お引越し」にそっくりだと思った。
このシリーズの他の作品も是非拝見したい!
>|