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座頭市と用心棒のmitakosamaのレビュー・感想・評価

座頭市と用心棒(1970年製作の映画)
3.8
祝!20作目にしてまさかのクロスオーバー!三船をゲストに用心棒との競演を実現させるという超変化球。
しかも大映+勝プロ制作で、監督やスタッフが東宝の岡本喜八組という意欲作だ。
こういう冒険心とサービス精神は流石勝新だよ。
異なる製作体制を導入し化学反応を狙ったが、不協和音に終わったかどうかは判断に悩む所だ。

まず、座頭市の風貌から違う。従来の五分刈りに比べ、一厘刈りくらいに髪が短い。しかもアイシャドウも眉メイクも濃い!これも岡本組?

市が再訪した村だが、かつての安らぎは無くヤクザの小仏一家の仕切る殺伐としている。
小仏一家には用心棒佐々大作(三船)がいるが、一癖も二癖もあり、小仏も市も振り回される。

用心棒佐々のペースに市が巻き込まれ、佐々有利に話が進むようだが飲み屋の梅乃には弱い。
この梅乃に若尾文子!豪華スターの競演だのー。

市は小仏の父親である豪商・エボシにわらじを脱ぐ。
エボシはもう一人の息子と結託し御用金を着服しており、それが親子の争いとなっている。
市と佐々は腹を探り合いながら、双方の陣営に揺さぶりをかける。

用心棒である佐々は三船の安定したキャラクター設定が活きているが、今作の座頭市はちょっとブレた感じがするんだよな。人を食った性格だが仁義には厚いのはそのままだが、どこか欲深い感じが変な不気味さになって表現されている。ブッチャけキャラが定まってない。

話が停滞した所で第3のキャラを投入するのは脚本の定石だ。ここで九頭竜なる用心棒(岸田森)が登場!
実は佐々・九頭竜共に公儀隠密で御用金横領を調べていた事が判る。

各々の私利私欲が絡み合う様に人間の悲哀がシニカルに描かれる。いつもは最終的に傍観者となる座頭市も、今作ではその滑稽な歯車の一部になってしまっているね。
そういう意味でも、シリーズを通してかなり異端な作品である事は間違いない。
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