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狂った野獣のTTのレビュー・感想・評価

狂った野獣(1976年製作の映画)
5.0
日本映画史に残る超傑作!!!!

新文芸坐で観れて良かった。本作は昔DVDで観たが、やはりテレビとスクリーンでは、画面からにじみ出る78分間ノンストップの狂ったようなハイテンションと熱量の洪水の度合いが全く違う。こんなエクストリームで強烈な映画体験は、今年観た映画でいうと『マッド・マックス 怒りのデス・ロード』級。

映画が始まっていきなり銀行強盗をして逃亡途中の犯人・片桐竜二と川谷拓三にバスがジャックされ、78分ず~っとバスが暴走し続ける。タイトルの「狂った野獣」は一見するとバスジャック犯を指しているような気がするのだが、実は一番狂っていたのは、人質の渡瀬恒彦の方だった。

犯人と被害者の立場が形勢逆転し、その中でパトカーが何十台もクラッシュし爆発する。ここまで車を叩き潰すカーアクション映画は日本では本作と『暴走パニック 大激突』くらいしかないだろう。しかも、どちらも渡瀬恒彦が主人公を演じ、自ら運転しているから可笑しい。

また、強盗や乗客のやり取りもやけにギャグが多くて全員喋りっぱなしなので、バスだけでなくドラマも、東映らしい騒々しさと勢いで突っ走る。特に、川谷拓三の挙動は笑ってしまう。

こんな名作がどんな風に作られたのか気になっていたら、中島貞夫監督のトークショーで暇な期間があったから18日くらいで撮影したという衝撃の事実が明かされ行天脱帽。

また、トークショーで語られた制作秘話が非常に面白かった。短い期間で作らなければいけなかったので、中島監督が村長として束ねていたピラニア軍団の俳優たちを総動員した。そのピラニア軍団の兄貴分だった渡瀬恒彦は、バスを運転するために営業用の大型免許を1週間で取得し、バスを横転させる時に監督がスタントマンを使うといったのに対し、「俺はバスを横転させるために免許を取ったんだ」と説得し、渡瀬本人によるバス横転シーンが実現したとそうだ。やっぱり、渡瀬恒彦は凄い!!。ちなみに、犯人役・被害者役のピラニア軍団の俳優たちは、兄貴分の渡瀬に付いて行かなければいけないという空気が彼らの中にあったため、横転したバスに乗っていたそうな(ただ、画面には彼らが映っていないw)。

徹頭徹尾、弾丸のごとく疾走するスピーディでハイパーな没入感満点の日本映画史上最強のカーアクション映画。これから映画で食べていこうという人は是非観てほしいなぁ。そして、日本にもこんな凄いアクション映画が作られていた時代があったんだというのを知って欲しい。
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