マグルの血

トゥルーマン・ショーのマグルの血のレビュー・感想・評価

トゥルーマン・ショー(1998年製作の映画)
4.6
生涯をテレビ番組で放送され続ける男が、自分の本当の人生を取り戻す話。

再鑑賞です。ジム·キャリーのキャリアにおける最高クラスの傑作だと私個人は思います。何度観ても衝撃を受ける。人間の醜い部分と美しい部分を同時に描いた貴重な作品。
ポップな画面からは想像もつかない非人道的な処遇。自分の信じた人生は全て他人が用意した虚構であり、全て嘘だと知ったとき人間性を保つことができるのか。

世界中に観られる男の人生とは。傍観するテレビの向こう側どころか鑑賞する私たちですら共犯者になる危険な作品。
エンターテイメントの本質と本物の人生の価値に迫る究極のヒューマンドラマ。


主人公トゥルーマンはありふれた保険の営業マン。家族がいて親友がいて、なに不自由ない生活を送っていました。
ところが、ある出会いをきっかけに自分の置かれている環境が果たして本物なのか、強く疑念を抱くようになります。

不自然な周囲の人々や環境に日々疑念を募らせ、そしてそれが確信に変わったときトゥルーマンはどういう行動を取るのか。そしてそれを見守る世界中の人々は何を思うのか。

ある種血の流れない残酷な物語。この人間において最悪な仕打ちを、それでも希望がわずかでも垣間見えるような作品に変えたのはジム·キャリーの好演によるものだと思います。
本作におけるジム·キャリーは神がかっていると思います。特にラスト。最高の笑顔が演出するカタルシスに涙がこぼれました。

ヒューマンドラマとカテゴライズするのもちょっと違う、それこそホラーとしても分類出来そうなほど嫌な部分に食い込んだテーマの作品。と言っても胸糞悪いというわけでも、観ると凄くシリアスな気分になるというわけでもない。変わった映画です。
嫌いな人はとことん嫌いな映画になりそうですが好きな人は一番好きな映画にもなると思います。非常に良作。

ところで、トゥルーマンのその後は描かず終わったのが非常に素晴らしいと思います。そううまくいくはずがない。余白の可能性が広いので、想像の余地がたくさんある。
私はシルビアと再会して細々とうまくやってくといいなと思いますが、現実は非常に厳しいでしょうね。クリストフが作り上げた「理想の世界」は虚構といえどトゥルーマンにとって刺激の少ない世界。現実の直面し生きていけなくなる可能性も十分考えられる。

それすらも含めて「本物の人生」には価値があるのだろう。色々と考えさせられる作品。

エンドロールの直前に差し込まれるシーンはゾッとしました。消費者心理ってあんなもんですよね。信じられないスピードで現実に引き戻される。
マグルの血

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