よねっきー

バンド・ワゴンのよねっきーのレビュー・感想・評価

バンド・ワゴン(1953年製作の映画)
4.7
一応存在している本筋を軽快に逸脱しながら、とにかくやりたいことやるミュージカル。基本的に歌って踊ってをやってる間は物語が停滞するんだが、物語なんかよりも音楽と身体の躍動がすべて、それこそがエンターテイメント! と言わんばかりに駆け抜ける。

ダンサーたちの身体性に映画のテンションが託されている。フレッド・アステアもシド・チャリスも重力を感じさせない身のこなし。その二人が一緒に踊るDancing In the Darkのシーンが良いのはもとより、そこに至るまでの焦らしが堪らない。二人が踊る瞬間への予感が、画面いっぱいに広がって美しい。

昔のミュージカル映画って、ダンスや歌への姿勢が誠実だよなあと思う。素晴らしいダンサーがいれば、ややこしいカメラワークなんかなくて良いのだと分かる。最も邪魔にならない位置に常にカメラがある。それができなきゃカメラも一緒に踊らなくちゃならないのだ。ダンサーの足を踏まないように。
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