Dumbo

チャップリンの殺人狂時代のDumboのレビュー・感想・評価

チャップリンの殺人狂時代(1947年製作の映画)
4.8
観賞してから一週間、仕事が再開したこともあるが、考えがまとまらず、レビューを書くのを後回しにしてた。
チャップリンは偉大すぎて、どう書いたらいいのかわからなくなるというのもある…
観賞した日の夕方のニュース番組で、1932年5月14日はチャップリンが初来日した日だと言っていて、タイムリーだった。来日した翌日に五・一五事件が起きて、彼も巻き込まれるところだったが、大好物の天ぷらを食べに行っていて難を免れたとか。もしこの時に暗殺されていたら、この作品を含むこの後の数々の素晴らしい作品もこの世に存在していなかったと思うとゾッとした。チャップリンはマネージャーも日本人だったぐらい、大変な日本贔屓だったらしい。その後も何回か来日していたようだ。

後期の作品なので、チャップリンといえばお決まりの、浮浪紳士の格好ではない。喜劇だけれど、サスペンス的な雰囲気も強く、全体的な雰囲気はかなりシリアスだ。
この作品で、チャップリンは12人の女性を殺し、その財産を奪う殺人犯の役を演じているが、裁判のシーン以降は役柄をこえて、チャップリン自身が自分の思いを言っているとしか思えず、鳥肌が立った。
 「一人を殺せば悪党
  100万人を殺せば英雄
  数が罪を正当化する」
 「神とはいい関係です
  私の敵は人間だ」
「罪とは何です?
  天から生まれ落ちたこと?」

第二次世界大戦が終わってすぐに出来た作品で、公開時のアメリカは戦勝国の歓喜の中、人々はこの作品にあまり興味を示さなかったようだ。
それでもチャップリンは、国が行う大量殺人である戦争を正当化してはいけないと主張するためにこの映画を作ったのだろう。
この時代にこのような映画を作るのはかなり勇気がいることだっただろうと思う。
チャップリンの映画は、弱い者、貧しい者にスポットをあて、優しい眼差しを向けているものもあれば、間違った方向に向かおうとする社会を皮肉を交えて痛烈に批判している本作のようなものもある。それらは相反するように見えて、どちらも人間愛に満ちている。彼の映画を作る原点や情熱も常にそこにあったのだろうと思う。
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