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僕の村は戦場だったのatsukiのレビュー・感想・評価

僕の村は戦場だった(1962年製作の映画)
4.1
戦争に家族を殺された少年が、戦争に復讐を誓い、ただ憎しみに支配されながら1人偵察行動を続ける。戦争映画でありながら直接的な残酷描写がないどころか、美しい自然美や抒情詩的な回想シーンなど芸術的な仕上がりになっている。

けれどもその静寂の中に戦争の怖さはしっかりと描かれていて、少年がいかにして戦争を鋭い眼光で睨みつける様になってしまったのか?という事を思うとひたすら物悲しいし、また時折の回想シーンで見せられる無邪気な姿も心が痛めつけられる。

兄弟や友達と鬼ごっこをし、疲れたら母の元に駆け寄る、そんな少年らしい何気ない日常さえも失われてしまっているのだ。それらはやはりタルコフスキー自身の幼少時代への郷愁にあるのだろうか。

またタルコフスキー印の、特に水の象徴性が少年が戦争を歩んだ末の成り果てと非常に相まって、川を渡るや井戸や浜辺や沼地など、どこまでも生と死の匂いを感じさせ続ける。

ラストでは写真であっても、少年の眼光から怨念が伝わるという迫力。また追い抜かしても走り続けた先に待つ木、そして暗転。残酷でありながらも芸術的に戦争の悲惨さを1人の少年を通して伝えるタルコフスキー印の戦争映画だった。

はたやその芸術性故にイニャリトゥは惚れ、少年の眼光がディカプリオに映り、『レヴェナント:蘇えりし者』が完成したのか。またオスカーも席巻とは…
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