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怪獣大戦争の教授のレビュー・感想・評価

怪獣大戦争(1965年製作の映画)
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大抵、ラストの怪獣バトルは飽きて眠くなる。今回はそれがなかった。その理由は簡単で、それらのシーンが短いからだ。
タイトルの「怪獣大戦争」は本来の意味では間違いで、「X星人との大戦争」である(ただ、大戦争というには小規模にも見える)。

時代柄、作劇や特撮技術などなど、ビックリするようなシーンや展開のテンコ盛りで、ツッコミどころと言えばまだマシで、正直シュール過ぎると思えるほど科学描写、ドラマのリアリティ描写などは杜撰極まりない。

ただ、侮れないのは本作は「怪獣」をダシにした思想映画としての部分である。
どこかしら作中に本多猪四郎監督は、「戦後日本への批評」を紛れ込ませる一方で、科学や戦後民主主義を礼讃しつつ、やや自己矛盾的、あるいは嘲笑気味に描写する傾向があり、本作の後半部分はそれが顕著である。

本作の主人公は、その民主主義の成れの果ての共産主義化した「独裁主義」であり、X星人たちの「画一化」された思考の不気味さが冴えている。
「計算」に執着して、イレギュラーが発生すると狂人のように慌て始める。
統制官を演じる土屋嘉男の好演が光る。
特に自爆していく中「未来に向かって」と言いながら自決する、という一連のシーンは見どころ。
ティム・バートン監督の「マーズ・アタック」はとても影響を受けているのがわかる。

また映画のルックも、特にグレンを演じたニック・アダムスは非常に007的であり、どことなくスパイアクション的なテイストも混じっている。
しかし肝心の、怪獣たち自体は何も見せ場がなく「シェーッ」だけが取り沙汰されるようになってしまったぶん、やるせない。
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