竜平

チェンジング・レーンの竜平のレビュー・感想・評価

チェンジング・レーン(2002年製作の映画)
4.0
見知らぬ二人の男の人生が「運転中の一度の無理矢理な車線変更」によって交差し、やがて大きく狂い始めていく、という感じの話。サスペンス的ヒューマンドラマ。

かなり前、公開当初に鑑賞して結構おもしろかったんだよなーってな記憶のままめちゃくちゃ久しぶりに鑑賞。監督が『ノッティングヒルの恋人』のロジャー・ミッシェルということに今更ながら気づく、ってのは置いといて。何気なくも日常的な事故が発端となって始まってしまう長くハードな一日。わりとシンプルな導入部からあれよあれよという間に不和や摩擦に溢れていく、最近のマーティン・マクドナー作品、『スリー・ビルボード』や『イニシェリン島の精霊』あたりを勝手に思い出したりして。本当に勝手にね。そんなこんなで今作は前述したようにヒューマンドラマとして楽しむべきなんじゃないかなと。ドンパチなどではない、人物同士の陰湿方向の争い、もとい憎み合い。一方は保険会社のしがないテレフォンアポインター、で息子たちの親権を巡る裁判のため法廷へと向かう道中。演じるのはサミュエル・L・ジャクソン。もう一方はウォール街の若手敏腕弁護士、で事務所絡みの裁判でこちらも別の法廷へと向かう道中。演じるのがベン・アフレック。このメイン二人の熱演が光りまくる。それぞれにある家庭や職場の事情、どうやら元アルコール依存症だったり、利益重視のいかがわしいことをしていたり、双方の現状というのが序盤から見えつつ、やがてすれ違いながら徐々にヒートアップしていく感情、やられてはまたやり返しての復讐心の連鎖というか。でそこに掛かる良心との葛藤もあったり。とにかくこの一件の行く末というのを見届けたくなるはず。

ウィリアム・ハート、シドニー・ポラック、リチャード・ジェンキンス、トニ・コレットなど脇を固めるキャストが何気に豪華という。久しぶりに見てまぁちょっぴり現実味に欠ける展開もある気はしたんだけども、やっぱり今作で楽しむべきは人間ドラマの部分、でメイン二人の姿になんとも見入ってしまう。恐らくシチュエーションや度合いは違えど、こんなふうに憎しみが連鎖してしまうことって日常に溢れてる気がするんだよね。自分に非がないと感じるような場合には尚更。誠実さと、許す気持ちと、お互いが持っていればすぐ解決するはずなのに、ね。人の愚かさと、在ると信じたい温かさと、そこらへんをいっぺんに受け取れる一本。シンプルな題材ながら心を揺さぶられる良作だと思う。好き。
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